Newsweek

パックン(パトリック・ハーラン)

パックンのちょっとマジメな話

トランプ元側近で「極右」のスティーブ・バノンに会ってきた!

2019年03月23日(土)14時00分

    おそらく、バノンが嫌われている一番の理由はこの貿易政策ではなく、もっと広い意味のFar right(極右)の指導者だと思われているからだ。バノンが会長を務めていた間、右翼メディアサイト「ブライトバート」は反移民、反ユダヤ、反イスラム、反同性愛、反フェミニズムなどの内容が目立った。そんな「反」だらけのブライトバートは逆に、いったい誰のためにあるのか? バノンは当時「Alt-right(オルト・ライト=ネット右翼)のプラットフォームだ」と自慢し、極端な白人至上主義のユーザーを歓迎していたことから、その答えが分かる。

    本人はそういう意味で「オルト・ライト」とは言っていないと否定するが、よく聞くブライトバートとバノンのイメージから、彼はEconomic-nationalism(経済的ナショナリズム)だけではなく、Ethnic-nationalism(民族的ナショナリズム)にも加担していると思われている。これがバノンに対する憎しみの種の1つだろう。

    本人もそうした事実を把握しているようで、公の場で頻繁にその印象を払拭しようとする。僕にも、2つの「ナショナリズム」の違いを丁寧に説明してくれた。「経済的ナショナリズムでは、人種も信仰も肌の色も宗教もジェンダーも性的指向も関係ない。大事なのはアメリカの国民であるかどうかだけだ」。ネオ・ナチやファシストはNut jobs(頭がおかしい連中)だとはっきり述べた上で、一番大事なのは黒人やヒスパニック系の雇用を増やすことだ、自分は有色人種の味方だと熱弁する。

    この取材で聞いた話しか知らなかったら、バノンの印象はかなりいい。僕も社会的弱者の味方のつもりだし、気が合いそうだ。タッグを組んでもいいぐらい。「パックンバックン」!

    しかし、僕はバノンと気持ちは同じでも、労働者を守る規制、最低賃金、国民皆保険や、マイノリティーを守る公民権、アファーマティブ・アクション(差別是正措置)、同性婚などを推進する民主党と、ダイバシティー(多様性)を歓迎するリベラル・メディアを支持する。

    なんでバノンの行動は違うのか? 口では僕と同じような理念を強調する彼が、なぜ少数派の民族や人種、性的マイノリティーに批判的なコンテンツを掲載するブライトバートの会長をやっていたのか(18年1月に退任)。なぜ大企業や富裕層を優先する政策で有名な共和党に加担するのか? なぜトランスジェンダー(体と心の性が一致しない人)の米軍入隊を禁止したり、性的暴行を訴える女性を馬鹿にしたり、白人至上主義のデモ参加者を「いい人」と褒めたり、メキシコ人を「殺人鬼」や「レイプ犯」、移民・難民集団を「侵略者」と罵ったりする大統領についていくのか。

    バノンは冷静な貿易論のように語り、「経済的ナショナリズムは、人種も信仰も肌の色も宗教もジェンダーも性的指向も気にしない」と言う。でも、「経済的ナショナリズムの主導者」であるトランプは相当気にしているようだ。そして、トランプの発言は実際に影響が大きそう。昨年、米ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教会堂)で起きた乱射事件と、先日ニュージーランドのモスク(イスラム教礼拝所)で起きた乱射事件には大きな共通点がある。両方とも犯人は移民の「侵略」に激怒していたというのだ。そして、とても信じがたいことに、トランプはモスク乱射の犠牲者への追悼コメントを伝える記者会見でも、「移民は侵略だ」と繰り返し主張した。

    確かに犯人の2人は「頭がおかしい連中」かもしれないが、彼らの発想は偶然に同時発生したものではないはず。そのタイプのナショナリズムにも主導者はいる。かつて日本の法相が言った「友人の友人はアルカイダ」ではないが、人は仲間の言動からも判断される。バノンも然り。

    このことについて、バノンはどう思っているのか。ブライトバートはもう関係ないというので、それは放っておくが、今も共和党員で、今も「世界一のトランプ・サポーター」を名乗る。まずは、所属の党について聞いてみたが――。

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    今月7日、都内のホテルでバノンと会談したパックン

    Q:有色人種の味方なら、なぜ下院議員の9割が白人男性である政党(共和党)に所属しているのか? 

    バノンはまず「そこまで多くないだろ!」と僕のデータを疑う。確かに、違っていました。正確にいうと9割ではなく88%だった。四捨五入して、すみません! そしてバノンは「そうであっても、大丈夫。これから変わるだろう」と、共和党の多様化に自信を見せる。しかし、バノンが大統領首席戦略官を務めていたときのホワイトハウスの人選には違うトレンドが見える。トランプ政権の閣僚に黒人は1人、ヒスパニック系は0人。中心スタッフにもインターンにさえも、マイノリティーはほとんどいなかった。こんなにホワイトなハウスは最近見ないね。有色人種の雇用をそこでは増やせなかったのかな?

    さらに聞いてみた。

    プロフィール

    プロフィール

    パックン(パトリック・ハーラン)

    1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

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