Newsweek

感染症

新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?

2021年1月14日(木)19時20分
小林 弘幸(順天堂大学医学部教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

    新型コロナ感染で重症化の原因とされるサイトカインストーム。その鍵となるのは? koto_feja - iStockphoto


    新型コロナの感染者のうち、どんな人が重症化しやすいのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「原因は、本来、身体を守るはずの免疫細胞が暴走するサイトカインストームだ。免疫の暴走を食い止めるには、『レギュラトリーT細胞』が欠かせない」という----。

    ※本稿は前田孝文※本稿は、小林弘幸・著、玉谷卓也・監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

    「重症化」はICUでの治療が必要な状態

    国内における新型コロナウイルス感染症では、感染しても約80%の患者が無症状か軽症で済むものの、高齢者や基礎疾患のある患者を中心に約15%は重症肺炎になり、約5%は致死的なARDS(急性呼吸促拍症候群)という呼吸不全に至ります。

    新型コロナウイルス感染症において「重症化」というのは、この5%を指します。

    ARDSに陥り、ICU(集中治療室)での治療が必要となった状態です。

    重症化から回復しない場合、数日のうちに呼吸不全は呼吸困難へと進行し、深刻な炎症に陥った心肺は機能しなくなるため、ECMO(エクモ)という人工心肺装置を装着。ここまで至ると、残念ながら8割方の患者は命を落としてしまいます。

    ウイルスの毒性だけならインフルエンザのほうが怖い

    これを聞くと、「新型コロナウイルスはなんと恐ろしい毒性を持っているんだ」と思うのですが、こうした症状の悪化の原因はウイルスの病原性だけではないことがわかっています。

    ウイルス単体の毒性でいえば、インフルエンザウイルスのほうがよほど怖いのです。

    では、なぜ世界で100万人以上もの方が命を落としているのか?

    その答えが、「サイトカインストーム」です。

    本来、わたしたちの身体を守るはずの免疫細胞が火の嵐のように暴走し、全身に炎症を引き起こす免疫の過剰反応が、この感染症の重症化の原因なのです。

    これは、2020年5月に、量子科学技術研究開発機構理事長で前大阪大学総長の平野俊夫先生によってあきらかにされています。

    「免疫の暴走」サイトカインストーム

    「サイトカイン」とは、免疫細胞同士が互いに協力したり、ウイルスとの戦いを有利に進めたりするために使う、免疫細胞が出す物質のことを指します。

    例えば、司令官役のヘルパーT細胞が、抗体をつくるようB細胞に指示したり、ウイルス撃退の実行を担うキラーT細胞に出動要請をかけたりするのにも使います。

    しかし、サイトカインにはガソリンのように危険な側面もあります。サイトカインの産生量が度を越せば、炎症は拡大して内臓や血管の機能不全を引き起こします。

    その「やり過ぎ」の状態がサイトカインストームです。

    平野先生の研究によれば、主に肺組織にいるマクロファージ(ウイルスを貪食したり、ウイルスの情報をヘルパーT細胞に伝えたりする免疫細胞の一種)から放出されるサイトカインが"主犯"とされています。

    本誌紹介

    特集:日本を置き去りにする デジタル先進国

    本誌 最新号

    特集:日本を置き去りにする デジタル先進国

    コロナを抑え込んだ中国デジタル監視の実態。台湾・韓国にも遅れた日本が今すべきこと

    2021年4月20日号  4/13発売

    人気ランキング

    • 1

      ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

    • 2

      世界の銃の半分を所有するアメリカ人、お気に入りの小型ナイフも持ち歩けない日本に思うこと

    • 3

      エヴァと私の26年

    • 4

      仮想通貨で7億円稼いだ「億り人」の意外な素顔と「成…

    • 5

      ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数…

    • 6

      東芝 車谷社長の何が悪いのか?

    • 7

      ふるさと納税は2年で750%増、熊本の人口4000人の町…

    • 8

      新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタ…

    • 9

      半数がワクチン接種済みのミシガン州も、変異ウイル…

    • 10

      ドイツで、世界初のスマホでできる新型コロナ感染テ…

    • 1

      青色の天然着色料が発見される

    • 2

      緑豊かな森林が枯死する「ゴーストフォレスト」が米国で広がっている

    • 3

      ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

    • 4

      ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数…

    • 5

      世界の銃の半分を所有するアメリカ人、お気に入りの…

    • 6

      ビットコインが、既に失敗した「賢くない」投資であ…

    • 7

      日本だけじゃない...「デジタル後進国」のお粗末過ぎ…

    • 8

      「頭の切れる人」とそれほどでもない人の決定的な差 …

    • 9

      「日本人なら中国人の3分の1で使える」 クールジャパ…

    • 10

      女子中学生がバスの扉に足を挟まれ、30秒間も道路を…

    • 1

      太平洋上空の雲で史上最低気温、マイナス111度が観測される

    • 2

      観測されない「何か」が、太陽系に最も近いヒアデス星団を破壊した

    • 3

      国際宇宙ステーションで新種の微生物が発見される

    • 4

      「夜中に甘いものが食べたい!」 欲望に駆られたとき…

    • 5

      EVはもうすぐ時代遅れに? 「エンジンのまま完全カー…

    • 6

      30代男性が急速に「オジサン化」するのはなぜ? やり…

    • 7

      孤独を好み、孤独に強い......日本人は「孤独耐性」…

    • 8

      ブッダの言葉に学ぶ「攻撃的にディスってくる相手」…

    • 9

      カミカゼ・ドローンで戦況は一変 米軍「最強」の座…

    • 10

      硬貨大のブラックホールが地球を破壊する

    もっと見る

    Picture Power

    レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

    【写真特集】アフリカの小国ジブチに注がれる熱視線