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イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

サンレモ音楽祭、希望と共生を伝えるイタリア歌の祭典

音楽祭の舞台、サンレモ アリストン劇場 2013/9/28 photo: Naoko Ishii

 今年71周年を迎えるサンレモ音楽祭(Festival del Sanremo)は、来週3月2日から6日まで、例年と違って無観客で、アリストン劇場の外での催しはいっさいなく、感染を拡大することのないよう規制を守って実施されます。

 サンレモ音楽祭は、先月の記事でもご紹介した「ヴォラーレ」の原曲、ドメーニコ・モドゥンニョが歌う「Nel blu dipinto di blu」をはじめ、数々の名曲をイタリアに、そして世界に送り出してきたイタリアの歌の祭典です。

 サンレモ音楽祭は、すばらしい歌を届け、多くの若手そしてベテランの歌手に機会を与えると共に、例年、社会問題にも言及し、人権が守られ、環境を大切にする、よりよい社会にしていくためのイタリア市民への意識づけや啓発に努めてきました。

 たとえば、2007年に優勝したシモーネ・クリスティッキの歌は、精神病院患者が医療関係者に命や尊厳を奪われる状況を語り(詳しくはこちら)、2015年にはイタリア初の女性宇宙飛行士、サマンサ・クリストフォッレッティがインタビューに答えて「すぐに壊れかねない美しい地球を皆が大切にしなければいけない、他には船はないのだから」と訴え、2017年には2016年のイタリア中部地震の被災地を忘れまいという思いを救援活動を続けた人々の経験や思いを通じて伝え、いじめを許さない姿勢をクラスや学校に作っていこうと活動する学校の生徒たちの活動を紹介していました。

 そんな中、アマデウスが司会を務めた昨年のサンレモ音楽祭は、例年にも増して、歌もすばらしく、感動に満ちていました。元恋人から顔に酸をふりかけられ火傷を負った女性が、歌を通して、女性への暴力を根絶しよう、被害者の女性は声を上げていこうと伝え、また、もう一人の女性が、祖母への感謝の言葉を通して、表面的な美しさにとどまらない女性のすばらしさ、社会・家庭における女性の役割の大きさを伝えていました。

 さらに、昨年のサンレモ音楽祭は、70年目にして初めて、視聴者からの要望に応じて、耳の聞こえない方は手話通訳や字幕と共に、目の見えない方は音声解説つきで、サンレモ音楽祭すべてを生中継で楽しむことができるようになっていました。また、ポップロックバンド、Le Vibrazioniの歌は、舞台上で手話通訳と共に歌われました。

 そして、シェフになりたいという夢を持ちながら、18歳で筋萎縮性側索硬化症を患い、思いを伝えるのは機械音声を通じてという22歳の若者が歌う歌も、新人賞の予備選考からは外れましたが、司会者たちの意向で招待され、サンレモの舞台で歌を披露し、多くの人々に感銘を与えました。

"Se vi dicono che i sogni non si realizzano sappiate che i limiti sono solo dentro di sé"
「もし夢は実現しないと言われても、限界は自分自身が作り上げているだけだと知っていてほしい」

 「今年の音楽祭は2度目の音楽祭ではなく、新しい未来へと向かっていく最初の音楽祭となる」というアマデウスの言葉を受けて、今年のサンレモ音楽祭では、舞台美術も、宇宙船、皆が向かっていきたいと望むようなよりよい未来へと向かっていくスターゲイトを意識して創り上げているとのことです。

 そういうわけで、今年も昨年同様、アマデウスが司会を務めるサンレモ音楽祭を楽しみにしています。

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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