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イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

ワクチン接種の絶大な効果、グリーンパス反対派と過激行動

引用元:2021/8/27付のイタリア高等衛生研究所による新型コロナウイル感染症の危険のモニタリング報告(記事中にリンクあり)

デルタ株が大半となった現在のイタリアでも、ワクチン接種完了者は重症化・死亡の危険が97%減少

 ワクチン接種は、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐのに、どれだけの効果があるか。今年4月4日から8月22日までに、イタリアで陽性と判定された人を対象とした8月27日付のイタリア高等衛生研究所(ISS)の報告によると、感染の危険は、ワクチンの接種1回で63.7%、ワクチン接種が完了している場合(接種が2回必要な場合は2回、1回で済む場合は1回) には、79.7%減少し、入院する危険は、接種1回で84.1%、接種完了で94.4%減少し、集中治療室に入院する危険は、接種1回で90.7%、接種完了で96.5%減少し、死亡する危険は、接種1回で84.0%、接種完了で97.0%減少すると推定されています。

 イタリアにおける1回のワクチン接種による感染や重症化、死亡の危険の減少率が、8月下旬の今では、上記ツイートに見られる7月上旬の減少率に比べて低くなっているのは、現在では、感染の大半をデルタ株が占めているからです。

 けれども、ワクチン接種を2回終えていれば、あるいは一度で済むワクチンを接種していれば、入院や重症化、死亡する危険が大幅に減少し、重症化や死亡を防ぐ効果は依然として高く、マスメディアでも、多くの医師や識者、政治家などが、繰り返し、「新型コロナウイルス感染症を打ち負かすために最も有効な武器」と訴えています。

 8月20日付のイタリア高等衛生研究所の報告によると、ゲノム配列の解析が行われたウイルスのうち、デルタ型の変異株の割合が、今年7月には86.8%であったのに対し、8月1日から16日の間には96.2%を占めるほどとなっているとのことです。(今年8月16日のデータ)

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 同報告によるとまた、デルタ株は感染力が非常に強く、英国由来のアルファ株に比べて、感染力が1.4倍から1.6倍で、ワクチン接種を1回しか受けていない人やまったく受けていない人が感染する危険が高いとのことです。

 ワクチン接種完了率が最も低く、観光客も多かったシチリアは、830日月曜日からイエローゾーンとなりました。イタリアでは、ワクチン接種が進み、新規感染者数が増加しても、すぐには医療機関が逼迫しない状況となったことから、現在では、感染者数だけではなく、集中治療室の病床使用率、その他の病床使用率も、ゾーン決定の指標となっているため、イタリアでは長い間、全国がホワイトゾーンという状態が続いていました。ところが、シチリア州では、820日から26日の1週間の新規感染者が住民10万人あたり200.7人となり(指標は50人以上)、集中治療室の病床使用率が12%(指標は10%以上)、その他の病床使用率が19.4%(指標は15%以上)となったため、イエローゾーンとなり、さらには、オレンジゾーンとなる恐れが高いと言われています。(以上の数値の参照元は、Sky TG 24のこちらの記事

ワクチン反対派・グリーンパス反対派の集会・行動の過激化と政府の対応

 ワクチン接種の効果が明らかであるにも関わらず、ワクチン接種で健康を損なう恐れがあるわけではないのに、様々な理由からワクチンを接種しない人がいて、中には声高にワクチン反対を訴える、イタリアではnovaxと言われる人々もいます。気が進まないから、副作用が心配だから自分はワクチンを接種しないというのではなく、ワクチン接種が健康に害をもたらすとか、マイクロチップを埋め込む陰謀だとか、そういう偽情報を、SNSでむやみに共有したり、ワクチン接種をどうしようかと迷っていた夫に、メッセージで何度も送りつけたりする友人がいて、夫が実際に接種を完了するまでは、はらはらしました。最近では、ワクチン接種を拒む医療従事者に対してイタリア各地で停職措置が取られ始め、9月1日からは学校の教職員も学校に入るのにグリーンパスが必須となったため、反対集会に積極的に参加している友人もいます。自由の制限には反対、ワクチンはまったく効き目がない、本当は新型コロナウイなど存在しないなど、訴えることは様々ですが、中には言うことがあまりにも偏っていて極端な友人もいるため、友人関係に亀裂が入ることさえあります。先日久しぶりに会った、北イタリアで看護師長を務める友人によると、新型コロナウイルス感染症で亡くなった患者を前に、「新型コロナウイルスなど存在しないのだから、病院の手違いで亡くなったのだ、訴える」と叫ぶ遺族さえいるそうです。

 ワクチン反対者の中にはさらに、一部少数だと思いたいのですが、最近では、ジャーナリストに傷害を負わせたり、医師や政治家、ジャーナリストに悪口雑言、死などの脅迫をほのめかすようなメッセージを送ったり、市長の自宅の前に大勢で押しかけて呼び鈴を鳴らして叫んだりと、過激な、犯罪とも呼べる行動に出る人々もいます。

 明日、9月1日からは、長距離移動の鉄道や船、飛行機などの利用に際しても、グリーンパスが必須となることもあり、ワクチン反対派やグリーンパス反対派のこうした過激な行動が頻発しているのですが、9月1日には、ローマのティブルティーナ駅やミラノのポルタ・ガリバルディ駅をはじめとするイタリア全国の55駅で反対集会を催して、鉄道の運行を阻害すると脅すという行動にさえ出ているために、内務省では、規則を守っての平和なデモ活動の権利はあっても、暴力や脅迫、公共のサービスの妨害は許されず、他の人々に迷惑をかけるばかりではなく犯罪だとして、鉄道駅の警備が強化されています。

 今日も報道番組で医師やジャーナリスト、政治家が語っていましたが、感染力の高い変異株が次から次へと出てくる新型コロナウイルスの感染を食い止めるためには、できるだけ大勢のワクチン接種とグリーンパスの必須化が不可欠であり、また、暴力は決して許されるものではなく、また、こうした集会で声を張り上げるのは極右で、人々の不満を利用して、破壊活動に及ぼうとするのであって、そうとは知らずに参加する人も少なくなかろうとのことです。

 番組では、ワクチン反対派の判断と行動を、「97%安全に渡れる橋があっても、3%の危険があるからと渡らずに、ワニとピラニアがたくさんいる川に飛び込むようなもの」と、たとえていました。先に言及した傷害を負ったジャーナリストは、学校の教職員たちにインタビューをしていただけなのに、その場に居合わせた一人から、突然暴言を浴びせられ、さらに、激しい暴力を立て続けに加えられたということです。明日の鉄道駅での反対集会も、極右の呼びかけに応じて、鉄道の職員や一般の乗客、あるいは警察などが被害に遭わないとは限りません。

 感染を食い止めるためにも、そうしてこうした反対派の過激な行動を廃絶していくためにも、ワクチンの有効性やグリーンパスの必要性を、何とかこうした人々にも分かるような、納得できるような方法を模索して、伝えていく必要があると感じています。

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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