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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

「日本のカルタ大会に出たい!」メデジン日本語スピーチコンテストで語られる想い

©️YouTube - Concurso de Oratoria 2021

8月21日、コロンビアの第二の都市メデジンで、第10回目となる「メデジン日本語スピーチコンテスト」が開催されました。

日本語スピーチコンテストは日本語を学ぶ学生たちがテーマに沿ったオリジナルの文章を考え、暗記し、スピーチをする大会です。

毎年図書館のホールなどを会場として行われていたこのコンテストですが、去年はパンデミックの影響で中止に。今年も開催が危ぶまれましたが、YouTubeを使ったオンラインでの開催が実現しました。

YouTubeはライブで行われましたが、アーカイブが残っているので是非実際のコンテストの様子をご覧になってみてください。(https://www.youtube.com/watch?v=OmqXi5H97po

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2019年のスピーチコンテストの様子 ©️メデジン日本クラブ

  

メデジン日本語スピーチコンテスト

コロンビアでは毎年3都市で日本語スピーチコンテストが行われます。

首都ボゴタでは日本大使館とロスアンデス大学が、日系人が多いカリでは日系人協会が主催者となって開催されますが、コロンビア第二の都市にも関わらず日本との関わりが少ないメデジンでは主催してくれる大きな団体がありません。そのためメデジンでは日本語教師である羽田野香里先生、アンドレイタさん、タティアナさんの3人がこのコンテストの主催者として毎年企画・運営を担当しています。個人開催のため入賞者に豪華な賞品をプレゼントするための予算は当然ないのですが、香里先生は日本語を勉強する学生のために自らの足でレストランなどを訪ね、毎年スポンサーになってもらえる人を探すのです。しかしコロナウイルスの影響で今年はスポンサー探しも困難に。今年は私たちもスポンサーとして少しですがコーヒーを賞品として提供し、コンテストに参加させてもらいました。私たちの他にも日本と繋がりが深いメデジンの和食レストランなどがスポンサーとして参加しています。

  

入門の部(動画9:15〜)

コンテストは入門、初級、中上級の3つの部門に分けて行われます。

入門の部では参加者は指定された詩を暗唱し、審査員がその発音や表現力などを評価するというもの。今年は谷川俊太郎の「朝のリレー」が選ばれました。

カムチャッカの若者が きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は 朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は 柱頭を染める朝陽にウインクする
この地球でいつもどこかで朝がはじまっている

ぼくらは朝をリレーするのだ 経度から経度へと
そうしていわば交換で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を 誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ

入門の部の参加者は9人。それぞれジェスチャーなどを交えて話しているのを見ると、入門と言いながらも詩の意味もキチンと理解していることがわかります。

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©️YouTube - Concurso de Oratoria 2021 入門の部1位のアリソン・ペレスさん

 

初級の部(動画27:40〜)

今年の初級の部では「コロナと私」「私の夢」「コロンビアと日本」の3つのテーマから1つを選び、3分以内でスピーチをします。

コロンビア人から見た日本とコロンビアの良いところ、パンデミックが自分にどんな影響を与えたかなど、とても興味深い話ばかりで日本語力を競うコンテストであることを忘れてしまうほどでした。

この初級の部で1位に輝いたのはソフィア・シルバさん(通称 海ちゃん)。(動画39:30〜)

彼女が今回選んだテーマは「コロナと私」。パンデミックが始まったばかりの頃、学校に行かなくてもいいと海ちゃんはワクワクしていたそう。しかし時間が経つにつれて家で座りっぱなしの生活に心が病んできてしまいます。好きだった勉強も次第に億劫に。そんなとき、中学校の美術の課題で「パンデミックの記憶」というテーマで作品を作ることになりました。この課題で彼女が感じていた不安を立体オブジェにして表現し、その作品は最優秀賞をもらいました。パンデミックで得た学びを将来に生かしましょうという、15歳とは思えないほどの力強いメッセージでスピーチを締めくくった海ちゃん。香里先生曰く、他の生徒のスピーチ原稿には少々添削が必要でしたが、海ちゃんの原稿にはほとんど修正点がなかったそうです。今回海ちゃんにインタビューをさせてもらいましたが、完璧な日本語で回答してくれたので原文をそのまま載せたいと思います。

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©️YouTube - Concurso de Oratoria 2021 ソフィア・シルバさん

-1位が決まった時、どんな気持ちでしたか?

「実は私は自分のスピーチにあまり自信がありませんでした、いくつかの間違いもしました。でも審査員のみなさまが私のスピーチを気に入ったことを知った時、本当に嬉しかった。」

-コンテストに参加しようと思ったのはなぜですか?

「一番目の理由は香里先生が応援してくれたからです。二番目の理由はコンテストに参加することで日本語の作文と発音をれんしゅうできると思いました。」

-将来の夢はなんですか?

「今、私の夢は世界中を旅することです。」

-日本語を学び始めたきっかけは何ですか?(彼女は10歳から日本語を学んでいます)

「日本語を初めて聞いた時「なんて うつくしい発音だろう」と思いました。日本語の発音が本当に好きだった。 それが日本語を勉強し始めた最初の理由でした。

今でも日本語の発音はうつくしいと思ってますが、発音だけじゃなく、書き方も、漢字の意味も、そして日本の文化も美しいですから日本語を勉強しています。

香里先生も美しい人ですから。」

-コンテストに参加して変化や学びはありましたか?

「日本語の発音がよくなったと思います。 そして、他の参加者のスピーチを聞いたり読んだり、他の人の興味深い視点を知ることができました。」

 

写真を撮ろうとすると髪の毛で顔を隠してしまうくらい恥ずかしがり屋の彼女ですが、香里先生が主催する日本のイベントには積極的に参加し、その様子に彼女のご両親は驚いているのだそうです。スピーチコンテストの出場はこれで3度目。今回初めて1位を勝ち取ることができました。来年は中上級の部でしょうか。海ちゃんの成長をこれからも楽しみにしています。

 

 

中上級の部(動画49:42〜)

中上級の部では自由にテーマを決めてスピーチを行います。

この部で1位に輝いたのはマリア・パウラ・コレアさん。(動画51:35〜)「カルタと私」というタイトルでスピーチをしてくれました。

学校で日本について学んだマリア・パウラさんは日本に興味を持ち始め、14歳の頃に「ちはやふる」という競技かるたを題材とした少女漫画に出会います。主人公の千早が百人一首に夢中になる姿を見て、その情熱に憧れたマリア・パウラさん。「自分も百人一首を通して千早と同じ世界を見てみたい」と日本語を本格的に勉強し始めました。お気に入りの歌は阿倍仲麻呂の「天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも」。中国から故郷日本を想って歌った歌とされていますが、彼女はこの歌を聞くと日本とコロンビアは同じ空で繋がっているから日本を近く感じるのだとか。彼女の夢はいつか近江神宮に行くこと、日本のカルタの大会に出ること。このスピーチの中で日本の文化の魅力を語ってくれたマリア・パウラさんにもインタビューしてみました。

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©️YouTube - Concurso de Oratoria 2021 マリア・パウラ・コレアさん 

-1位になった時どんな気持ちでしたか?

「驚きました。勝つとは思っていなかったので信じられなかったし、自分のこととは思えませんでした。同時にもっと大きなチャレンジに立ち向かわなければないという事なので緊張もしました。そういった不安な気持ちもありましたが1位になった事はとても嬉しく、満足した気持ちになりました。私の努力が実を結び、それは私の夢にまた一歩近づいたという事ですから。」

-なぜスピーチコンテストに参加しようと思いましたか?

「正直、最初は参加するかどうか迷っていました。以前参加した時、緊張しすぎてスピーチを忘れてしまった事があったからです。でもそのあと香里先生のおかげでこれは成長する過程だと気づくことができ、そのためにこの困難を乗り越えようと参加を決意し努力を重ねました。」

-将来の夢はなんですか?

「ありきたりに聞こえるかもしれませんが、最近は日本に行くことをずっと夢見ています。日本を間近で見て、日本の文化を肌で感じ、難しいけど美しい日本語もっと学びたいのです。その夢を掴むために私は今精一杯努力しています。」

-どうやって百人一首を勉強しますか?

「歌を探してそれを読むのが好きです。初めて参加したスピーチコンテストでは百人一首について話しました。だから忘れないようにたまに始めの10個の歌を読み返しています。」

-百人一首以外で日本にどんな魅力を感じますか?

「日本の文化が大好きです。多様性があり、近代的な時代の中にも古い文化が残っており、それが見せる世界観がとても美しいです。伝統やお祝いごとにもとても惹かれます。全てに意図や深い歴史があり、それぞれのお祝いごとに大切な意味があるからです。」

-スピーチコンテストに参加して変化や学びはありましたか?

「日本語を学び続けるための自信がつきました。また、自分の成長にも繋がりました。先ほど言ったように、初めて参加したスピーチコンテストはうまくいかなかったですが、今回のコンテストでは自分の努力の結果を見せつけることができましたし、私のメッセージや私の冒険についての気持ちを伝える機会を得ることができましたから。」

 

今回、マリア・パウラさんはボゴタで行われる日本語スピーチコンテストへの出場権が与えられ、更にそのコンテストでも優勝すれば国際交流基金が実施する2週間の日本語学習者訪日研修プログラムにコロンビア代表として招待されます。日本に行きたいというマリア・パウラさんの夢が叶うよう、引き続き彼女を応援していきたいと思います。

 

 

スピーチコンテストに出場することは容易ではありません。外国語で文章を書き、それを暗記し、練習を重ね、大勢の前で発表し、それが評価されるわけですから。コンテストの中で(動画1:35:00〜)2019年のスピーチコンテストの優勝者であり、国際交流基金の訪日研修にも参加したケリー・オカンポさんは「参加したい!その気持ちだけで勝者です」と言っていますが、まさにその通りだと思いました。コンテストに参加した全員に対して、私は大きな拍手を送りたいと思います。

インタビューに答えてくれた海ちゃん、マリア・パウラちゃんありがとうございました。そして本当におめでとうございます。香里先生、アンドレイタちゃん、タティアナさん、審査員の方々、お疲れ様でした。来年も楽しみにしています。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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