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ドバイ像の砂上点描

Mona|UAE

ドバイが今「リモートワーク・ビザ」を打ち出す理由

(JohnnyGreig-iStock.)

ドバイ、リモートワーカー向けビザを発行

昨今インターネット上で話題になっている「リモートワーク・ビザ」「ノマド・ビザ」。ドバイもこれを開始したことに注目が集まっている。バーチャル・ワーキング・プログラムと名付けられたこの施策は「母国(UAE国外)の勤務先に所属したまま、ドバイに居を移し、遠隔で働く」という形態で、世界中からドバイにリモートワーカーを集めるものだ。

今日はこの件の紹介と、ドバイ市民として思うところ、ドバイのノマド事情などを書いていきたい。

ドバイのリモートワーク・ビザとは

このビザを取得すると、本人とその家族が1年間ドバイに住むことができる。ドバイに住む、ということが意味するのは、エミレーツIDを持ち、住居を借りたり、銀行口座を開設したり、子供が学校に入学したり、そして税制面のメリットを享受したりできるということだ。当然、空き時間は街に繰り出して、一大観光地ドバイを満喫できる。ビーチあり、砂漠あり。ショッピングを楽しむのも良いだろう。

そんなライフスタイルのイメージ動画がこちら。

申し込みの条件

申し込み条件は以下の通りらしい。

・パスポートの有効期限が6ヶ月以上あること。
・UAE国内で有効な医療保険への加入。
・現在の雇用主からの雇用証明書。1年間の契約有効期間があり、月収約55万円(US$5,000)以上である前月の給与明細書、前月分の銀行口座明細書の提出。
・申請者が会社経営者である場合:1年以上の会社所有の証明、平均月収約55万円(US$5,000)の月収明細書、前3ヶ月分の銀行口座明細書の提出。
・ビザ料金約3万円(US$287)、および手続きに対する手数料(金額不明)。

おそらく上記の金額は純粋な「ビザ代金のみ」の数字なので、これに加えて別途、健康診断代、エミレーツID発行費用が必要になるはずだ。

なぜ今リモートワーク・ビザを出すのか

このプロジェクトが発表されたとき、私が真っ先に思ったことは「その手があったか」だった。なぜかと言うと「今のドバイが必要としているもの」にピッタリだからだ。

今のドバイが必要としているもの、それは「外からカネを持ってきて、ドバイに落としてくれる者」である。これに当てはまるのが、まずは観光客。そして、この条件に当てはまり、且つ観光客よりも長くドバイに滞在してくれる可能性があるのが、リモートワーカーである。

平常時、当地は出稼ぎ受け入れ大国である。インド人やフィリピン人を筆頭に、出稼ぎ労働者が集まり、ドバイでカネを稼いで母国へ送金する。しかしコロナ不況に直面した今、このカネの流れを逆流させたいのだ。

コロナ禍が始まって以降、出入国やビザのルールは「今この街が誰を求めているか」を如実に反映し続けてきた。

例えば(現在は徐々に緩んでいるものの)ここ数ヶ月、一時帰国中の外国人居住者のUAE再入国よりも、観光客の入国の方が簡単だった。更に、ワーカークラスよりも管理職の方が、再入国が簡単だった。つまり「カネを運び出す者より、カネを落としに来る者」「職が必要な者より、職を作れる者」がより簡単に入国できたのだ。

実際に、弊社のフィリピン人スタッフは、休暇で一時帰国したまま実に半年もの間、ドバイへ戻ってくることができなかった上(その間は無給休暇)、UAE再入国時には許可の申請が必要だった。パキスタン系の取引先では「いま休暇でパキスタンへ行った場合、戻ってくる許可が下りるのは社長だけだから」という理由で、平社員は休暇を延期し、社長だけが休暇を先取りしているところもあった。

一見さんの観光客に対しては門戸を開き(7/7以降)、長らく当地に暮らしているワーカーには再入国を渋るーー。なんとも冷酷に見えるこの方針が意味するのは「カネを運び出す者より、カネを落としに来る者が必要だ」ということに他ならない。

今回その白羽の矢が立ったのが、リモートワーカーということである。

tourist-passport.jpg

(xijian-iStock.)

日本人にオススメか?チェックポイントは

さて、このビザの取得が日本人にとってオススメかどうか考える際には、たとえば以下のような点をチェックする必要があるだろう。

まずは時差。日本とドバイには、時差が5時間ある。ドバイの朝7時が、日本の昼12時だ。とすると、日本時間に合わせて超早起きをするか、フレックスタイム制度などが必要になる。過去に1人だけ、日本からの出張者の中で「日本本社の勤務時間帯は自分も起きていたいので、ドバイ滞在中は毎朝4時(日本時間9時)に起床する」という強者に出会ったことがあるが、そう簡単なものではないだろう。

また、どのくらいの日本企業が、フル・リモートと海外居住を許可するのかは疑問だ。特に税金周りについては、ドバイとしては所得税ゼロが最大のウリのひとつなのだが、そういったイレギュラーな処理を勤務先が対応してくれるかどうか。

ビザの期限が1年で、更新不可というのも気になる。当地で日本人が取得している一般的な居住ビザの有効期限は、大概が2〜3年で、かつ更新可能だ。1年というのは明らかに短い方。そして、公式サイトによると、1年が経過した後は「更新」ではなく「再申込み」が必要と書かれている。このビザはコロナ不況の副産物であるため、先のことは少しぼやかしておきたいのかもしれないーーー

などなど。

ちなみに、このビザは「ノマド・ビザ」とも呼ばれることがあるせいで、IT系ノマド等で活動しているフリーランスの方々が「自分もアプライしてみたい」と思われたかもしれないが、残念ながらこれは「母国(UAE国外)に勤め先企業がある人」用のビザである(社員としてでも、経営者としてでも構わない)。フリーランスの方は、リモートワーク・ビザではなく、フリーランス・ビザを検討しよう。

ドバイのコワーキング・スペース

さて、実際にドバイの片隅でリモートワークをしている私の作業場所を紹介してみたい。

第一が自宅。第二にカフェ。そして第三が、コワーキング・スペースだ。以下の写真は私が実際に利用しているコワーキングスペースである。

IMG_9601.jpg

ここは混雑しすぎることはなく、静かで快適な場所である。wi-fiの速度や安定感はもちろん問題ない。頼めばプリンターなどの機材も借りられる。

IMG_9603.jpg

周囲を見渡すと、何やら難しそうなコードを打ち込んでいるプログラマーの人や、防音個室に複数人で篭り仲間と打ち合わせをしている人、私のようにキーボードを叩いている人などがいる。ここの場合、主な利用者は欧米人のようだが、それ以外の顔ぶれはドバイらしく、世界中の様々な人種が満遍なく少しずつ集って構成しているようだ。

このようなコワーキングスペースが、ドバイ各地に複数箇所ある。こういった場所に通ってPCを開き(もちろん自宅でもいいが)、普段通り日本の勤務先の仕事をして、同時にドバイ生活を体験するーー。

もしあなたがフルリモート勤務OKの企業にお勤めであれば、ちょっと検討してみると面白いかもしれない。

 

Profile

著者プロフィール
Mona

アラブ首長国連邦ドバイ在住。東京外国語大学卒業後、日系ベンチャー、日系総合商社を経て、湾岸系資本の現地商社に勤務する。その傍ら、ブロガーとしてドバイ現地情報や中東ビジネス小話を発信中。

ブログ「どうもヒールが砂漠に刺さる」

Twitter:@Monataro_DXB

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