World Voice powerd by Newsweek

農・食・命を考える オランダ留学生 百姓への道のり

森田早紀|オランダ

オランダ西部に広がる人工の農地、人工の自然

(筆者撮影 2021年8月 風力タービンの並ぶ農業地帯、見えるのはキャベツ畑。街路樹も行儀よく並んでいる)

見渡す限り、地平線まで続くまっ平な土地。
何列にも並ぶ風力タービン。
15分おきに快晴・曇り・雨と目まぐるしく変わる天気。

ここはFlevopolder、つい数十年前には湖だった干拓地。

IMG_20210807_121452.jpg

(筆者撮影 2021年8月 Flevoland州の一自治体Drontenの麦畑)

アムステルダムの北東にあるFlevoland(フレヴォランド)州。大学の夏休み期間にこの地域の農園に滞在し、周辺を自転車で巡った。その時の写真とともに、歴史的背景や農業の実態を紹介しよう。

歴史

今Flevoland州があるこの地域は元々低地で、調べる限り、陸地だった時期と湖だった時期が両方あったようだ。13世紀の洪水により、農地が浸水して新たな湾ができ、北海(Noordzee)に対して南海(Zuiderzee)と名付けられた。

1916年の大雨と洪水により再びZuiderzee周辺の地域が浸水し、堤防を建設することを国が決めた。湾の入り口にAfsluitdijk(閉鎖堤防・下の地図中のFlevoland州の左上に示された黄色い線)を作り、IJsselmeerという湖ができた。そして同時に干拓地も作った。

これが1986年に設立した、12個目の州、Flevolandだ。面積は1412㎢で、日本最小の都道府県・香川県(1877㎢)よりも小さい。

名前の由来は、古代ローマ時代から中世初期にこの地域にあったと記録されているLake Flevo(Flevo湖)である。

農業地帯としてのFlevoland州

この地域では農業が盛んで、主に根菜(ジャガイモ、甜菜、人参)やキャベツ、麦などが広大な土地で栽培されている。

スクリーンショット 2021-08-16 092720.png

(van den Akker et al., 2013 土地利用。黒線で囲まれているのがFlevoland州。オレンジが根菜;黄色は穀物;紫は泥炭地と草原;緑は森;紺は樹園;灰色は建物)

IMG_20210802_211829.jpg

(筆者撮影 2021年8月 Flevoland州の一自治体Lelystadにおいて。これを育てているのは、オランダでもトップ規模の有機かぼちゃ生産者だそうだ)

土はローム、もしくは粘土質。比較的肥沃だが圧縮に弱く、雨が続くとベトベトの層になってしまう。トラクターなどの農業機械でその上を走るとなおさらだ。

IMG_20210810_170056.jpg

(筆者撮影 2021年8月 土とイチゴの苗。べっとりした土の触感が伝わるだろうか)

地下水位は用水路や運河、ポンプによって一定に保たれている。この地域のぶどう農家さんに聞いたところによると、そのおかげで水やりの必要がないということだった。さらに、元々海だった場所の土は塩分濃度が高すぎないかと気になったが、研究大学による最新の調査によると作物の根が張る上部1.5mの土の塩分濃度は通常値であった、と言っていた。

IMG_20210808_114414.jpg

(筆者撮影 2021年8月 Flevoland州の一自治体Almere周辺をサイクリング中に見つけた運河とゲート。小さな船が移動できるように区切られている)

農業に加え、湖の沿岸では漁業も行われているそうだ。

人工的な自然

湖の横に位置しているというだけあって、Flevoland州では風が絶えない。それを活用した発電・風力タービンがあちらこちらで見られる。等間隔に並んでいて、いかにも「㎜単位まで設計して建てました」というような不気味なくらい秩序のある風景。

IMG_20210812_181323.jpg

(筆者撮影 2021年8月 農地と風力発電所が広がる)

Flevoland州の南西部には、工業地帯にする予定だった地域がある。しかし水位が高すぎて工業地帯にするには見合わないため、国立の自然保護区に用途変換され、Oostvaardersplassenと名付けられた。森林や沼地、湖があり、様々な鳥類が観察できるという。

下の写真はその一画、公園内をサイクリング中に撮ったものだ。よく見ると、木々も種類・大きさごとにお行儀よく植えられている。自然公園さえも人工という不思議な世界だった。

IMG_20210808_093811.jpg

(筆者撮影 2021年8月 AlmereとLelystadの間に位置する自然公園にて。よく見ると、木々も同じ種類のものがお行儀よく植えられている)

農園に滞在中に一緒に作業したフランス人とイタリア人曰はく、オランダの風景は人工的だ、と。

頷くしかなかった。

参考文献

Bodematlas, n.d. Duurzaam gebruik ondergrond
Canon De Noordoostpolder, n.d.
2 - Lake Flevo and Lake Almere: swamp and lakes (0-1200 AD)
Rosenberg, 2019. How the Netherlands Reclaimed Land From the Sea
van den Akker et al., 2013. Risico op ondergrondverdichting in het landelijk gebied in kaart
van Scoubroeck & Kool, 2010. The remarkable history of polder systems in The Netherlands
(文中にリンクタグをつけたものを除く)

 

Profile

著者プロフィール
森田早紀

高校時代に農と食の世界に心を奪われ、トマト嫌いなくせにトマト農家でのバイトを二度経験。地元埼玉の高校を卒業後、日本にとどまってもつまらないとオランダへ。農業応用科学大学の4年生。卒業後は地元で百姓になり、楽しく優しい社会を、農を軸に築きたい!オランダで生活する中、感じていることをつづります。

Instagram: seedsoilsoul
YouTube: seedsoilsoul

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ