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アルゼンチンと、タンゴな人々

西原なつき|アルゼンチン

侵入者はどっち?カピバラ大繁殖事件から見えるアルゼンチンの社会格差問題

(Photo: istock /JohannesCompaan )

先日、アルゼンチンのトップニュースをにぎわせ、世界中で話題になった少し変わったニュースがあります。
それは、「カピバラが大繁殖し、生息地である湿原地帯から住宅地に出没し始め、問題を引き起こしている」というもの。


カピバラはアルゼンチンではカルピンチョという名前で呼ばれます。人畜無害のおとなしい草食動物で、大人の場合は体重60キロ、体長1.30メートルにもなります。その可愛らしくほのぼのとするような風貌は、日本でもキャラクター化されるほどですが、ここアルゼンチンの湿地帯には野生のカピバラが数多く生息します。
首都ブエノスアイレスの中心地近くにある自然公園(Eco Parque)には、園内にカピバラの生活するゾーンがあり、アルゼンチンでは身近な動物として親しまれています。


しかし今、国内のとある地区でそのカピバラが大繁殖し、民家の庭に出没しゴミを漁ったり、交通事故を引き起こしたり、飼い犬が傷つけられるという問題が起き、一部の住民たちが駆除をしたいと訴えているのです。


なのですが、この地区「ノルデルタ」という場所は、実は元々はカピバラが住んでいた湿原があった場所。未開だった自然あふれる湿原を、約20年前から富裕層向けの別荘地に切り拓いた地区なのです。
これにより、カピバラをはじめとする多くの在来種の生息環境が変化しました。この地区に推定約400匹生息していると言われているカピバラは、元の場所で得られなくなった餌を探しに行動範囲を広げ、民家の庭の草や観葉植物などを求めるようになったのです。

(在アルゼンチン日本大使館はカピバラを擁護するツイートを出し、現地ニュースAmbitoやPagina12にも取り上げられました。)



状況としては、
住民 → 駆除を訴えている。
政府 → 保護し移動させたいとの意向。
環境保護団体や専門家 → 野生動物の生息地を強制的に移動させることは自然に反することであり、反対している。


という構図になっています。
そしてその騒動の舞台となった街も特徴的であることから、元々アルゼンチンで根深い社会階級問題も絡まり合い、「カピバラとお金持ち、侵入者なのはどっち?」というテーマに発展し過熱しているのです。
「資本論」を読むカピバラの画像など、風刺のきいたコラージュ画像も沢山SNS上などで拡散され、インターネット上で大盛り上がりとなりました。
そして実は、ノルデルタに住む一部のお金持ちと一般国民の間の確執は、今に始まったことではないのです。事の始めは、数年前にさかのぼります・・・。

Profile

著者プロフィール
西原なつき

バンドネオン奏者。"悪魔の楽器"と呼ばれるその独特の音色に、雷に打たれたような衝撃を受け22歳で楽器を始める。2年後の2014年よりブエノスアイレス在住。同市立タンゴ学校オーケストラを卒業後、タンゴショーや様々なプロジェクトでの演奏、また作編曲家としても活動する。現地でも珍しいバンドネオン弾き語りにも挑戦するなど、アルゼンチンタンゴの真髄に近づくべく、修行中。

Webサイト:Mi bandoneon y yo

Instagram :@natsuki_nishihara

Twitter:@bandoneona

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