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トスカーナの糸杉と救急車

奥村千穂|イタリア

2020年夏のヴァカンスとイタリア人

南イタリア、プーリア州の海(筆者撮影)

海のヴァカンスとイタリア人

最近、私が住むトスカーナの小さな村では、夏のバカンスから戻ってきたばかりであろう、こんがりと日焼けしたイタリア人を頻繁に見かけます。今年は国外になかなか出られない分、旅先として、南イタリアやサルデーニャ島のビーチリゾートが人気です。

イタリア政府は国内の観光業を活性化させるため、日本のGO TO トラベルキャンペーンに似た、Bonus Vacanze (ボーヌス・ヴァカンツェ)と呼ばれる旅行のための支援金を制定しました。私は南イタリア出身の旦那の実家に帰省したので、このボーナスシステムは利用しませんでしたが、多くの人が、この旅行支援金を利用して家族旅行に出かけました。一人あたり150ユーロ(約19000円)、二人の場合は300ユーロ(約37000円)、3人以上は500ユーロ(約62000円)の補助が出され、この金額の80%は宿泊施設で直接割引、残りの20%は年度末の税金から控除という形で戻ってきます。

私たちが訪れた南イタリアの海辺のヴァカンス先では、店に入るときにはマスクを着けますが、砂浜では、誰もマスクを着けておらず、昼間はまるでコロナ禍がなかったかの様な、例年通りの賑わいでした。一方、同じ南イタリアでもビーチ以外の内陸部の観光地では、ほぼ全員がマスクを着け、ソーシャルディスタンシングが取れていないことを気にしながら、おっかなびっくり観光をしている姿がテレビで報道されていました。私たちは南イタリア、プーリア州での2週間のバカンスの間、人が少ない朝のビーチへ行き、人が多そうな観光地を出来るだけ避けて過ごしました。

8月の最終週、イタリアでは各地でヴァカンス帰りの新規感染者の数が増えています。ビーチリゾートのディスコやナイトクラブ内でマスクなしで大勢の人々が集う姿が報道され、心配していた矢先、トスカーナ州でも8月25日と8月26日で州内の日次感染者数が34人(県内PCR検査数3874件)から161人(県内PCR検査数6084件)と大きく増加しました。
今の所、政府は9月14日からの学校再開の方針を示していますが、今後の感染者増加数によっては、再検討もあり得るでしょう。

イタリア緊急事態宣言から7ヶ月

思えば1月31日に発令された緊急事態宣言から既に7ヶ月が経ちました。

2月21日に初めてコドーニョで1人目のイタリア人の陽性患者が発生し、同日に14人の感染者を確認、そして初の新型コロナウイルスによる死亡者も確認されました。2月23日にロンバルディア州とヴェネト州がレッドゾーンに指定され、この日から市民保護局の局長による毎日の感染レポートがテレビやネットで配信され、日替わりの専門家による会見、ジャーナリストとの質疑応答をテレビで観ることが私にとっても毎日の日課になりました。

刻々と状況が変わる中、3月11日についにイタリア全国のロックダウンが始まり、この日から5月18日まで約2ヶ月間、イタリア全土に厳しい移動制限が敷かれます。この時期、多くのイタリア人が今年の夏、海へヴァカンスに行くことを夢見ていたことでしょう。5月後半から職場が再開しますが、デスクワーカーの多くは今も自宅でテレワークを続けています。
6月に入り、少しずつ街の中に活気が戻り、7月にはEU圏内の外国人観光客の姿も少しずつみられるようになりました。そして、大部分のイタリア人が夏休みを取る8月半ば、国内のリゾート地では、去年と変わらずに海水浴を楽しむ人々の姿がありました。

厳しかったロックダウン中のイタリアの状況を振り返ると、今、こうして自由に外出が出来ることが奇跡のように思われます。今後、感染者数が増え続け、開かれた扉が再び閉じられてしまうのか、果たして、このまま9月の学校再開は可能なのか。9月1週目の感染状況が1つの転機になりそうです。

 

Profile

著者プロフィール
奥村千穂

イタリア、フィレンツェ在住歴22年。滞在型アパートメントの紹介サイト「ラ・カーサ・ミーア」を運営。イタリア語現地医療通訳。2019年より地元救急センターの救急車ボランティアに参加。近著『美しいフィレンツェとトスカーナの小さな街へ』(旅のヒントブック)。

ブログ:フィレンツェ田舎生活便り

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