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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

やや難航中、英国のコロナウィルス第二波対策

(交通機関を使う時や屋内ではマスク着用が義務。違反すると最高で6400ポンド(約90万円)の罰金が。筆者撮影)

ロンドンでは10月17日土曜日の午前零時からコロナ対策の規制がまた厳しくなった。今回は全国的なロックダウンではなく、警戒レベルを3段階に分けて、感染者数の多い地方をより厳しく規制するやり方で、イングランド北部ではパブやレストランが閉鎖された地域もある。

9月ごろから英国でも北部を中心に感染者数がふたたび増え始めていた。9月半ばに少し規制の強化があったものの感染の拡大は止まらず、10月12日の時点で感染者数は4週間で4倍になり、10月16日の新規感染者数は1万8980人にのぼった(BBC報道)。10月に入って周囲のヨーロッパの国々の規制が厳しくなると、英国もいよいよ再ロックダウンか? という空気が漂い始めていた。それでも街はわりと落ち着いていて、3月のようなスーパーでの激しい買い占め合戦は起きなかった。宅配サービスの利用がますます浸透しているのかもしれない。

行列 - 1.jpg(買い占めはなかったものの、スーパーに入る行列がこれまでより少し長くなった。パスタもいつもよりよく売れていたよう。筆者撮影

現在、イングランドでは警戒レベルを「中程度(これまでどおり)」、「高い(屋内で人が集まれない)」、「とても高い(他の世帯の人と会えない、パブやレストランも閉鎖)」の3段階に分けている。17日からロンドンに適用されたのは第2段階の「高い」のレベルで、内容はざっと以下のとおりだ。

・世帯の違う人が集まれるのは6人までで、場所は庭や公園などの屋外のみ。つまり家の中やパブで一緒にいられるのは同居している人だけ(小さな子どもの世話などを除く)。

・ ソーシャルディスタンスが保てない限り、同居人以外と自動車に一緒に乗るのもだめ。

・ 学校、店舗、美容院などはこれまでどおり。

・ パブやレストランの営業は夜22時まで(席に着くまでや席を離れる時はマスクをする)。

・ 同じ世帯の人とであれば宿泊施設を利用できる。

・ 結婚式や披露宴に参列できるのは15人まで、お葬式は30人まで。

・ ソーシャルディスタンスを守ること、屋内や公共交通機関ではマスクをすること(罰金あり)、できる限り家で仕事することは、これまでどおり。

・ 他のヨーロッパの国のように、いつまでという期限は設けられていない。

ソフトロックダウン - 3.jpg(午後6時のウォータールー駅。以前は帰宅ラッシュの時間だったが、家で仕事する人が増えたので、電車待つ人はこれまでの3分の1ぐらい。筆者撮影

3月の外出禁止に比べると今回の規制はゆるいものだが、実はあまりすんなりとは進んでいない。

ジョンソン首相が3段階の警戒レベルという方法を発表したのは10月12日の会見だった。この時点では、ロンドンを含むほとんどのイングランドは一番低い「中程度」レベルに入っていて、第2段階の「高い」に指定されたのは主に北部、「とても高い」に指定されたのはリバプール周辺だけだった。

ところが会見からほんの数時間後、短期ロックダウンが必要という科学者会議からの助言を政府が反映しなかったことが報道された。またその日のうちにロンドン市長が「ロンドンは今週中にも『高い』にレベルを上げる」と発言したこともあって、本当はロックダウンが必要なのに実施されなかったのでは? という不安が広がった。

結局、会見から3日後に、ロンドンなどの数か所を「高い」に引き上げ、ランカシャーとマンチェスターの地区を「とても高い」に追加すると保健相が発表した。こんなにすぐ変更するなんて! と驚いたが、市民の反応も見てのことなのかもしれない。

さらに驚いたのは、「とても高い」に追加されたランカスターやマンチェスターの市長らが政府のこの決定を拒否したことだ。「北部は実験台にされて、まるで炭鉱のカナリアだ、全国一斉にロックダウンすべき」「閉鎖される地元産業への補償が不十分」というのが言い分だが、こんな非常時の政府決定に同意しないほど大きな権限が地方自治体にあるなんて! 首相はその後「できれば協力して進めたいが、受け入れないなら強制することになるかも」と言っているので、政府が自治体の意思を尊重しているだけかもしれないけれど。

この拒否の翌日、ランカスターはレベル引き上げに同意した。だがこのブログを書いている時点(3日後)では、マンチェスターはまだ同意していない。産業に大打撃という事情はよくわかるものの、北部が南部よりずっと感染率が高いのは統計でもはっきりしている。それに市長が野党労働党の所属というのも関係しているらしいと聞くと、まさか人の命の話に政治を持ち込んでいるんじゃないよね? という不信感もわき上がってしまう。今は党の壁を忘れて、とにかく人の命と生活を守ることを最優先に考えてもらえますように。

ソフトロックダウン - 5.jpg(観光客や買い物客でいつもにぎわっていたオックスフォードストリートも今はひっそり。それでもクリスマスのイルミネーションは準備が始まっている。筆者撮影)

と、もやもやが残りつつも、少なくともロンドンでは土曜日から新しい規則が適用された。これでイングランドの人口の約半数が「高い」以上の規制の対象になったことになる。

ここでは話が複雑になりすぎないように、わたしが住むイングランドに絞ってお伝えしたが、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドでは独自の規制が敷かれている。状況がくるくる変わってわかりにくいので、英国内の郵便番号を入力するとその地域の最新の警戒レベルを教えてくれるBBCのこのシステムが便利だ(英語のみ)。

警戒レベルを教えてくれるBBCのシステムが載った記事

規則が厳しくなる前にはいつも、最後に大酒を飲んで騒ごうという若者が出てくる。先週金曜の夜にも街のあちこちでソーシャルディスタンスを無視したお祭り騒ぎがあったようだ。

そして今回は、とても若いとは言えないわが家でも急きょ友人夫妻を夕食に招いて過ごした。すでに暖房も入り始めている今の季節、夏のように庭や公園でピクニックをしたりパブのテラス席に座ったりすることは気軽にはできない。ということは、これからしばらくは友人と落ち着いてご飯を食べる機会はぐっと減るということだ。

この夜は部屋にキャンドルを灯し、ワインを飲んでご飯を食べて、しゃべって笑って、これからの静かな生活に向きあう元気を蓄えた。

秋 - 1.jpg(もう暖房なしには過ごせない毎日。紅葉黄葉も葉が落ち始めている。筆者撮影)
 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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