コラム

岸田首相はDappi疑惑を放置して衆院選を戦うのか

2021年10月16日(土)14時41分
岸田首相

「聞き上手」でも臭いものに蓋をするのは同じ?(10月14日、記者会見) Eugene Hoshiko/REUTERS

<自民党が野党に対するデマを広める目的で、この匿名ツイッターアカウントを利用していたとすれば、河井克行元法相が対立候補を貶める架空ブログを業者に書かせていたことに匹敵する事件だ>

スクリーンショット 2021-10-16 14.46.49.png

10月9日、オーストリアのセバスティアン・クルツ首相が、自分に有利な報道を流すようマスメディアを買収していた疑惑が発覚し、辞任した。一方、日本でも、ある企業が運営するSNSアカウントが、政権与党と通じて野党や野党議員に対するデマを流したり誹謗中傷をおこなっていたりしていたという疑惑が持ち上がっている。

マスコミを買収して自分に有利な世論調査結果を報道させる

クルツ首相は、2017年に当時31才で首相に就任し、極めて若い国家指導者として話題になった。所属政党の国民党は中道右派政党だが、クルツは極右政党である自由党のお株を奪うような移民排撃の右派ポピュリズムによって人気となり、一躍リーダーとなったとみられていた。

しかし、ここにきて彼が首相に就任する前の2016年から2018年にかけて、クルツが自分に有利な世論調査報道を行うよう大手マスコミに持ちかけ、後日、その謝礼として公金が支払われていたという疑惑が持ち上がった。クルツはこれを否定しつつも、連立パートナーの緑の党の要求もあって「混乱を招かないため」という理由で辞任を選択した。

TwitterアカウントDappiをめぐる疑惑

一方、日本ではDappiというTwitterアカウントを巡って疑惑が持ち上がっている。このアカウントは、専ら野党議員をデマや中傷を交えながら攻撃するアカウントとして知られており、多くのフォロワーを抱えていた。

Dappi人気の理由の一つは、たとえば国会中継に対して、資料も交えながら随時コメントを行うという速報性にあった。それは国会での質疑に関して事前に情報を得ていなけば難しいもので、また投稿時間が平日のオフィスアワーに限られていたことから、Dappiは何らかのかたちで国会の情報を入手可能な「法人」なのではないかという説は昔からあった。

2020年7月、内閣情報調査室は「Twitterにおける「Dappi」なるアカウントについて、内閣情報調査室が有する一切の文書」の開示請求に対して、「存否を明らかにしない」と回答し、その理由は「本件対象文書の存否を明らかにした場合、(中略)当室が行う業務の適正な遂行に重大な支障を及ぼすおそれがあり、ひいては我が国の安全が害されるおそれがある」からであるとした。単に不存在とするのではなく、暗に内閣情報調査室との関係を匂わせるような文言に、疑惑はいっそう深まっていた。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと)  埼玉工業大学非常勤講師、批評家
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿 
Twitter ID:@hokusyu82 『

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

アングル:中台どちらにつくか、ソロモン諸島で政府と

ビジネス

アングル:深センの不動産仲介業者が苦境に、市場冷え

ワールド

焦点:利下げに賭けるエルドアン大統領、インフレ進行

ワールド

オミクロン株、世界40カ国に拡大 米国では計10州

MAGAZINE

特集:文化大革命2.0

2021年12月 7日号(11/30発売)

習近平が主導する21世紀の共産主義回帰運動 思想統制を強め孤立主義に走る、その真意はどこに?

人気ランキング

  • 1

    大暴落の足音

  • 2

    「脳まで筋肉の柔道選手」と中傷された彼女が医学部合格を果たした、たった一つの理由

  • 3

    親の「赤ちゃん言葉」は幼児期の言語習得に影響する

  • 4

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「…

  • 5

    半身を失った「ゾンビザメ」、10匹に共食いされてな…

  • 6

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 7

    幸せな生活を突き詰めた結果、行きついた「核シェル…

  • 8

    今度はディオールの写真を「人種差別」と吊し上げた…

  • 9

    ビートルズ最高の作詞家がジョンではなく、ポールで…

  • 10

    ついにスパイダーマンの世界に殴り込み? 『ヴェノム…

  • 1

    「脳まで筋肉の柔道選手」と中傷された彼女が医学部合格を果たした、たった一つの理由

  • 2

    「米化」でブレイク オートミールにハマった人たちに起きた変化とは

  • 3

    半身を失った「ゾンビザメ」、10匹に共食いされてなお泳ぎ続ける:動画

  • 4

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「…

  • 5

    大暴落の足音

  • 6

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 7

    親の「赤ちゃん言葉」は幼児期の言語習得に影響する

  • 8

    最初から「失敗」が決まっていたクロエ・ジャオ監督…

  • 9

    茂みから出てきた野生ゾウがサファリカーを襲う瞬間

  • 10

    ビートルズ最高の作詞家がジョンではなく、ポールで…

  • 1

    【動画】リビングの壁を這う「猫サイズ」のクモ

  • 2

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 3

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「両親」になった

  • 4

    最初から「失敗」が決まっていたクロエ・ジャオ監督…

  • 5

    「脳まで筋肉の柔道選手」と中傷された彼女が医学部合…

  • 6

    「米化」でブレイク オートミールにハマった人たちに…

  • 7

    半身を失った「ゾンビザメ」、10匹に共食いされてな…

  • 8

    「可愛すぎて死にそう」ウサギを真似してぴょんぴょ…

  • 9

    大暴落の足音

  • 10

    あなたはいくらエクササイズしても痩せない 脂肪燃…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中