最新記事

アルコール

ノンアルコールビール未開のアメリカ、「コロナ明け」機に大手が販売攻勢

2021年7月25日(日)11時41分

同社は、今年は試飲が元の軌道に戻るとみており、オフィス向けだけでも400万缶程度を配布する。音楽フェスティバルや集合住宅、ショッピングモール向けにも試飲を行う予定だ。

ビール最大手ABインベブも1年前に、看板商品であるバドワイザーのノンアル版の米国販売を開始した。同ブランドのグローバルマーケティング担当、トッド・アレン氏は「ずっと昔から克服すべき壁の1つが風味で、消費者に試してもらうのが本当に重要だ」と指摘した。

大人向けソフトドリンク

市場調査会社SLICEによると、ノンアルビールの消費市場は約4分の3を欧州が占める。スペインではノンアルがビールの全販売の13%に達する。

日本ではビールの売り上げの5%近くがノンアル。メーカーは新しいブランドを立ち上げ、急成長を見込んでいる。

しかし米国はノンアルビールにとって未開の地で、ユーロモニターのデータに基づくシェアはわずか0.5%にすぎない。

IWSRドリンクス・マーケット・アナリシスによると、米国のノンアルビール販売は18年まで3年間にわたって減少が続いたが、19年には増加に転じ、この年が転換点となった。

米国のノンアルビールの販売量は、新製品の投入や健康志向などを追い風に、25年までの5年間に3倍近く増加し、約60%増と予想されている全世界を大幅に上回る伸びとなる見通しだ。この間、国内のビール販売全体は18%減少すると予想されている。

ノンアルビールの成長はビール大手にとって非常に重要だろう。大手はこの数年、クラフトビールとハードセルツァーという2つの敵との戦いに直面しているからだ。クラフトビールは今ではビール市場で約12%のシェアを握っており、ハードセルツァーは16年の発売以来、販売が毎年倍ずつ増えている。

一方、ノンアルビール市場では、大手が後塵を拝するのではなく先頭に立っており、新製品によって中核となるビール市場ではなくソフトドリンクからシェアを奪えるかもしれない。

ノンアル飲料は通常、利益率も高い。製造コストはかさむが、税率が低いためだ。

ABインベブのアレン氏は、ノンアルビール分野は新しくアルコールを楽しむようになった世代の間でパフォーマンスが比較的良好で、これは明らかにプラスなことだと述べた。

メーカーは、ビールが多くのソフトドリンクと違って「自然な」原料で製造されていると強調する。バドワイザーのノンアルキャンペーンも、砂糖を使っていないこと、通常のバドワイザーと比べてカロリーが3分の1であることを訴えている。

メーカーの見立てでは、ノンアルビールの消費者はドライバーや酒を断っている人、妊婦にとどまらない。状況に応じてただ控えているだけの、ほとんどの愛飲家も対象になるからだ。

メーカーはノンアルビールについて、国内のスポーツイベントが販売の好機になるとみている。多くの場合、試合の終盤には酒類の販売が禁止されるからだ。さらに、ノンアルならば新たな領域にも入れる可能性があると考えている。

バースタイン・オートノマスのシニア飲料アナリスト、トレバー・スターリング氏は、メーカーにとって鍵となるのは、ノンアルビールをライフスタイルの選択肢の1つへと進化させることで、例えば単なるビールの代用品ではなく、職場で朝に飲むソーダ飲料に代わって飲まれるようにするやり方がある、と解説した。

「機会は巨大だが実現は難しい。メーカー側は売り出し方も変えなければならない。消費者がアルコールを含まないビールというより、ビール風味のノンアルドリンクや大人向けソフトドリンクとみてくれるように」という。

ハイネケンのドルフ・ファン・デン・ブリンク最高経営責任者(CEO)は、いずれビール市場におけるノンアルのシェアは5%程度に達すると予想する。ユーロモニターのデータでは、昨年の売上高で見たシェアは2%前後だった。

CEOは「この先起こり得る最大の間違いは手綱を緩めること。まだ旅は始まったばかりだ」と自らを戒めた。

(Philip Blenkinsop記者、Joyce Philippe記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・「ワイン離れに歯止めがかからない」 フランス人が代わりに飲み始めたものとは?
・「酒飲み」はオワコンに? シリコンバレーも注目の「ソバーキュリアス」を名乗る若者たち
・ワイングラスのサイズ、3世紀で7倍になっていた!


今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

アングル:気候変動対策で企業が出張削減、対応迫られ

ワールド

アフガン南部のモスクで自爆攻撃、ISが犯行声明 3

ワールド

焦点:韓国と北朝鮮の「軍拡最前線」、兵器展示会でつ

ビジネス

米国株式市場=続伸、ゴールドマン決算を好感 ダウは

MAGAZINE

特集:ドキュメント 中国撤退

2021年10月19日号(10/12発売)

規制と圧力、そして始まる新・文化大革命 見切りをつけた外国企業にいよいよ撤退の兆し?

人気ランキング

  • 1

    緑地、易居、花様年、当代置業......中国・恒大集団発の不動産ドミノが始まった

  • 2

    銀河系の中心方向から謎の電波源が検出される

  • 3

    なぜ中台の緊張はここまで強まったのか? 台湾情勢を歴史で読み解く

  • 4

    防犯カメラが捉えた「あわや」の瞬間 深夜帰宅の女…

  • 5

    地球はこの20年で、薄暗い星になってきていた──太陽…

  • 6

    再生可能エネばかりを重視したヨーロッパがはまった…

  • 7

    ピアニスト辻󠄀井伸行さんインタビュー…

  • 8

    観測されない「何か」が、太陽系に最も近いヒアデス…

  • 9

    カーク船長の宇宙飛行に黒い疑惑──生命を尊重する『…

  • 10

    「ナチュラルすぎる自撮り」で人気者のゴリラ、親友…

  • 1

    地球はこの20年で、薄暗い星になってきていた──太陽光の反射が低下

  • 2

    なぜ中台の緊張はここまで強まったのか? 台湾情勢を歴史で読み解く

  • 3

    モデルナ製ワクチンで重い副反応を経験した大江千里が、それでも3回目を接種する理由

  • 4

    「ナチュラルすぎる自撮り」で人気者のゴリラ、親友…

  • 5

    中国進出の日本企業は、極めて苦しい立場に立たされ…

  • 6

    「ワクチン反対」の投稿をきっぱりやめ、自身も接種…

  • 7

    中国バブルは崩壊する、だがそれは日本人が思うバブ…

  • 8

    防犯カメラが捉えた「あわや」の瞬間 深夜帰宅の女…

  • 9

    銀河系の中心方向から謎の電波源が検出される

  • 10

    緑地、易居、花様年、当代置業......中国・恒大集団…

  • 1

    薄すぎる生地で体が透ける! カイリー・ジェンナーの水着ブランドが炎上

  • 2

    中国バブルは崩壊する、だがそれは日本人が思うバブル崩壊ではない

  • 3

    イギリス人から見た日本のプリンセスの「追放劇」

  • 4

    中国製スマホ「早急に処分を」リトアニアが重大なリ…

  • 5

    イチャモン韓国に、ジョークでやり返す

  • 6

    【独占インタビュー】マドン監督が語る大谷翔平「や…

  • 7

    アイドルの中国進出が活発だったが、もう中国からは…

  • 8

    地球はこの20年で、薄暗い星になってきていた──太陽…

  • 9

    なぜ中台の緊張はここまで強まったのか? 台湾情勢を…

  • 10

    「ナチュラルすぎる自撮り」で人気者のゴリラ、親友…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月