最新記事

シリア

安田純平さん「シリアの武装勢力が身代金要求」、ジャーナリスト団体が声明―情報の信ぴょう性には疑問も

確かなことはまだわからないが、現地の武装勢力を刺激するような言動だけは控えるべきだ

2015年12月24日(木)17時33分
志葉玲(フリージャーナリスト)

安否が気遣われる イラクやシリアの戦場を取材してきた安田純平氏(写真は2004年、バグダッド) Thaer al-Sudani-REUTERS

 国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」は、フリージャーナリストの安田純平さん(41)がシリアの武装勢力に拘束されており、「身代金を要求されている」「期限内に対応しなければ殺される」として、早急な対応を日本政府を求める声明を、22日、団体のウェブサイトに掲載した。だが、国境なき記者団の情報については信ぴょう性に疑問も残る。

 安田さんは、シリアで取材中の今年7月、その消息を絶った。海外メディアなどで、現地武装勢力に拘束されたと報道されるなど、海外の報道関係者及びジャーナリスト団体も、その安否を心配していた。今回、「国境なき記者団」は、同団体が得た情報として、「安田さんはシリアで武装勢力に拘束されており、武装勢力らは身代金を要求している。期限内に要求が満たされなければ殺される恐れがある」としている。その上で、日本政府にありとあらゆる手段をとるよう、求めている(関連情報)。

 だが、筆者が信頼する情報筋からは、身代金や殺害予告についての情報はなく、国境なき記者団の情報の信ぴょう性は低いように思われる。2004年4月のイラクでの日本人人質事件でも、誘拐犯とは関係ない人物が自分が「交渉役」だと名乗り出て、混乱を招くということがあった。国境なき記者団もそうした攪乱情報に惑わされている可能性もある。

 国境なき記者団の情報が間違っているとしても、安田さんがシリアで拘束されている可能性は高く、日本政府には慎重な言動が求められる。後藤健二さんと湯川遥菜さんが人質とされた際も、安倍首相は中東の嫌われ者イスラエルで同国の国旗の前で演説する、交渉を一切しない、ISに人脈をもつ学者やジャーナリストの協力の申し出を無視するなど、まるで人質を殺せというような振る舞いをした。くれぐれも、現地の武装勢力を刺激するような言動は控えてもらいたい。


[執筆者]
志葉玲
フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
パレスチナやイラクなどの紛争地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、米軍基地問題や反貧困、TPP問題なども取材、幅広く活動する反骨系ジャーナリスト。「ジャーナリスト志葉玲のたたかう!メルマガ」 http://bit.ly/cN64Jj や、週刊SPA!等の雑誌で記事執筆、BS11等のテレビ局に映像を提供。著書に『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』『母親たちの脱被曝革命』(共に扶桑社新書)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。オフィシャルウェブサイトはこちら

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

シノバックのコロナワクチン、mRNAなど追加で抗体

ビジネス

ミーム株不調、ゲームストップやAMC年初来約30%

ビジネス

ECB、12月にも25bpの利上げ 物価目標早期達

ビジネス

MSCI世界株価指数、一時「調整局面入り」に

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:あぶない超加工食品

2022年2月 1日号(1/25発売)

脳の快感回路にダイレクトに響く「不自然な食品」は食品業界の福音だが、消費者には病気の源?

人気ランキング

  • 1

    「渡航禁止の解除を」WHO勧告を無視する日本とオミクロン株をまん延させたイギリスの違い

  • 2

    部屋を「片付けなさい」はNG 子供の自己肯定感を伸ばす、正しい「声かけ」の方法

  • 3

    キャサリン妃の服装は、メーガン妃の「丸パクリ」!? 英王室ファンが熱い論争

  • 4

    『ドライブ・マイ・カー 』がアメリカの映画賞を総な…

  • 5

    「ひざの痛み」という悩みがいつまでも解消されない…

  • 6

    1回40秒、風呂上がりと外出前の1日2回...「ひざの痛…

  • 7

    知ってた? 太陽系は「巨大な泡」の真ん中に浮かん…

  • 8

    コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相…

  • 9

    イギリスに新たな変異株「デルタプラス」出現 従来型…

  • 10

    飼い主に高速連続パンチを見舞う子猫 ネット民から…

  • 1

    1000年に1度のトンガ大噴火、これでは終わらない可能性

  • 2

    ブタの心臓を受けた男に傷害の前科──「もっとふさわしい人にあげて欲しかった」と、被害者の遺族は言う

  • 3

    部屋を「片付けなさい」はNG 子供の自己肯定感を伸ばす、正しい「声かけ」の方法

  • 4

    『ドライブ・マイ・カー 』がアメリカの映画賞を総な…

  • 5

    「渡航禁止の解除を」WHO勧告を無視する日本とオミク…

  • 6

    キャサリン妃の服装は、メーガン妃の「丸パクリ」!? …

  • 7

    知ってた? 太陽系は「巨大な泡」の真ん中に浮かん…

  • 8

    コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相…

  • 9

    通りすがりの女性に救われた子猫は「とんでもない場…

  • 10

    飼い主に高速連続パンチを見舞う子猫 ネット民から…

  • 1

    飛行中のステルス爆撃機が「グーグルマップ」に映り込んでいた

  • 2

    外国人同士が「目配せ」する、日本人には言いづらい「本音」

  • 3

    コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相次ぐ、「一生このまま」と医師

  • 4

    空手がアラブで200万人に広まったのは、呑んだくれ日…

  • 5

    ブタの心臓を受けた男に傷害の前科──「もっとふさわ…

  • 6

    1000年に1度のトンガ大噴火、これでは終わらない可…

  • 7

    部屋を「片付けなさい」はNG 子供の自己肯定感を伸…

  • 8

    日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援…

  • 9

    早老症のユーチューバーが15歳で死去

  • 10

    『ドライブ・マイ・カー 』がアメリカの映画賞を総な…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月