最新記事

歴史問題

アパホテル問題の核心~保守に蔓延する陰謀史観~

2017年1月27日(金)15時00分
古谷経衡(文筆家)

アパグループ東京本社(APA赤坂中央ビル) Kim Kyung-Hoon- REUTERS

<アパホテルが南京大虐殺などを否定した本を客室に置いていたことで中国政府からも批判を浴びているが、問題の書籍にみられるような「コミンテルン陰謀史観」はネット右翼などにとってもはや「史実」。こうした歴史観を信奉する日本人の存在が無視されている>

アパ=右、は業界内で常識

 大手ホテルチェーンAPA(以下アパ)が運営する同ホテルの客室に、同ホテル代表の元谷外志雄氏(ペンネーム・藤誠志)による「南京大虐殺の否定」などのオピニオン書籍(『本当の日本の歴史 理論近現代史学2』)が置かれたことが、大きな問題になっている。中国側の「炎上」に対し、当のアパは「本は(客室から)撤回しない」と断固とした主張を自社サイトに掲載した。

 ことの経緯はすでに報道されている記事を参照されたい「アパホテルの利用中止要求 中国政府、国内旅行業者に」(2017年1月24日 朝日新聞)中国SNSで炎上したアパホテルが見解 「本は置き続ける」「予約に変化なし」(2017年1月17日 ITmedia ニュース)

 結論から言って、私企業であるアパが元谷氏の著書を同ホテル室内に置くことは、言論の自由であり問題はない。仮に元谷氏が左翼・リベラル思想の持ち主で、自社の客室に「憲法9条を世界遺産に」とか「大陸への侵略を子々孫々まで懺悔し続けるべし」という内容の書籍を設置したとしてもそれは許容されるべきである。まさに「私はあなたの意見には反対だ。しかし、あなたがそれを主張する権利は死守する」というヴォルテールの名言の適用が適当であろう。

【参考記事】アパホテルを糾弾する前に中国共産党がやるべきこと

 更に元来アパグループが、2008年より懸賞論文「真の近現代史観」を主催していることや、私塾「勝兵塾」などの運営を通じて、保守界隈、保守言論界隈に「喰い込んで」いることは、少しでも保守界隈の事情に触れたことがあるものなら、誰でも知る「常識」といえることなのである。つまり私がこのニュースに触れた第一印象は「いまさら何を言っているのだ」というものである。「アパ=保守・右、元谷氏=保守界隈のパトロン」的性格は、すわ10年近く前からこの界隈で常識であった。それをいまさら「発見」され、問題視されるのは、やや遅きに失した「発見」のような気もする。

【参考記事】アパホテル炎上事件は謝罪しなければ終わらない

問題の核心=コミンテルン陰謀史観

 ところが私が指摘したいこの「アパホテル問題」の核心というのはこの部分ではない。アパホテルは1月17日に自社グループの公式サイトにて、問題になった件の元谷氏による書籍の一部を引用して、次のように反論を展開している。その一部を引用する。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

シノバックのコロナワクチン、mRNAなど追加で抗体

ビジネス

ミーム株不調、ゲームストップやAMC年初来約30%

ビジネス

ECB、12月にも25bpの利上げ 物価目標早期達

ビジネス

MSCI世界株価指数、一時「調整局面入り」に

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:あぶない超加工食品

2022年2月 1日号(1/25発売)

脳の快感回路にダイレクトに響く「不自然な食品」は食品業界の福音だが、消費者には病気の源?

人気ランキング

  • 1

    「渡航禁止の解除を」WHO勧告を無視する日本とオミクロン株をまん延させたイギリスの違い

  • 2

    部屋を「片付けなさい」はNG 子供の自己肯定感を伸ばす、正しい「声かけ」の方法

  • 3

    キャサリン妃の服装は、メーガン妃の「丸パクリ」!? 英王室ファンが熱い論争

  • 4

    『ドライブ・マイ・カー 』がアメリカの映画賞を総な…

  • 5

    「ひざの痛み」という悩みがいつまでも解消されない…

  • 6

    1回40秒、風呂上がりと外出前の1日2回...「ひざの痛…

  • 7

    知ってた? 太陽系は「巨大な泡」の真ん中に浮かん…

  • 8

    コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相…

  • 9

    イギリスに新たな変異株「デルタプラス」出現 従来型…

  • 10

    飼い主に高速連続パンチを見舞う子猫 ネット民から…

  • 1

    1000年に1度のトンガ大噴火、これでは終わらない可能性

  • 2

    ブタの心臓を受けた男に傷害の前科──「もっとふさわしい人にあげて欲しかった」と、被害者の遺族は言う

  • 3

    部屋を「片付けなさい」はNG 子供の自己肯定感を伸ばす、正しい「声かけ」の方法

  • 4

    『ドライブ・マイ・カー 』がアメリカの映画賞を総な…

  • 5

    「渡航禁止の解除を」WHO勧告を無視する日本とオミク…

  • 6

    キャサリン妃の服装は、メーガン妃の「丸パクリ」!? …

  • 7

    知ってた? 太陽系は「巨大な泡」の真ん中に浮かん…

  • 8

    コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相…

  • 9

    通りすがりの女性に救われた子猫は「とんでもない場…

  • 10

    飼い主に高速連続パンチを見舞う子猫 ネット民から…

  • 1

    飛行中のステルス爆撃機が「グーグルマップ」に映り込んでいた

  • 2

    外国人同士が「目配せ」する、日本人には言いづらい「本音」

  • 3

    コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相次ぐ、「一生このまま」と医師

  • 4

    空手がアラブで200万人に広まったのは、呑んだくれ日…

  • 5

    ブタの心臓を受けた男に傷害の前科──「もっとふさわ…

  • 6

    1000年に1度のトンガ大噴火、これでは終わらない可…

  • 7

    部屋を「片付けなさい」はNG 子供の自己肯定感を伸…

  • 8

    日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援…

  • 9

    早老症のユーチューバーが15歳で死去

  • 10

    『ドライブ・マイ・カー 』がアメリカの映画賞を総な…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月