最新記事

兵器

空から実用化が進む世界の無人兵器事情:ボーイングやカラシニコフも

2019年3月7日(木)18時20分
内村コースケ

新興勢力が運用する「自爆ドローン」

遠隔操作による無人航空機(ドローン)は、既に今世紀初頭から対地攻撃、偵察任務に実戦運用されている。米軍がイラク戦争やアフガン戦争で使用したRQ-1プレデターやRQ-4グローバルホークが有名だ。

これらの大型の機体は高価で、衛星通信サイトなどの設備も必要なことから、使用国は今の所アメリカなどの超大国に限られる。

一方、近年小国や中東の武装勢力によって運用されているのが、通称「自爆ドローン」または「カミカゼ・ドローン」と呼ばれるミサイルサイズの「徘徊型兵器」だ。映像でつながったオペレーターの操縦により、敵軍事施設や要人といった目標を見つけるまで敵地上空を何時間も旋回してチャンスを伺うことができる。技術的には、事前にプログラミングすれば自立攻撃も可能だ。単価が安く、目標を発見できなかった場合は無傷で帰投できるため、懐にも優しい。

現在、この自爆ドローンのシェアをほぼ独占しているのはイスラエルで、中国などにも輸出している。イエメンのフーシー派武装勢力も独自開発の自爆ドローンの使用実績がある。ここに来て、ロシアでも先月、AK-47アサルトライフルで有名なカラシニコフ社が超小型自爆ドローンを発表。イスラエルもこれに近い新型ドローンで対抗している。アメリカ、中国も独自開発中だ。今や無人航空機の開発競争は、世界に広がっている。

カラシニコフ社の自爆ドローン

ロシア製無人戦車は散々なデビュー

着々と進む航空戦力の無人化に対して、陸はまだまだだ。ロシアは、無人戦車「ウラン-9」を昨年5月にシリア派遣軍に配備したが、その後のデビュー戦は散々だったと伝えられている。「ウラン-9」は30mm機関砲・機関銃・ミサイル・火炎放射器を備えた複合戦車で、後方のオペレーターの操縦で前線の兵士を援護する。

ロシアの無人戦車「ウラン-9」

国内での運用試験では成功が伝えられていたものの、実戦は全く勝手が違ったようだ。まず、安定して通信できる距離が想定よりもだいぶ短かった。『ポピュラー・メカニクス』のレポートによれば、せいぜい基地から1,000〜1,500フィート(約300〜480メートル)の範囲内でしかまともに操縦できず、約1分間通信が途絶えたのが17回から19回、1時間半にわたって操縦不能に陥ったことも2度あったと伝えられている。市街戦に使用したところ、建物によって電波が遮断されたのが原因らしい。

武装のリモコンシステムもトラブルに見舞われた。30mm機関砲の発射に際して、6回タイムラグが生じ、完全な不発も1回あった。また、移動しながらでも火器を正確に発射できるという触れ込みだったが、実際は火器管制装置が移動中に安定せず、いったん停止してからでないと発射できなかった。索敵能力も、謳っていたスペックの3分の1以下しか発揮できなかったようだ。シャーシとサスペンションの機械的なトラブルにも見舞われた。

『ポピュラー・メカニクス』は、「ウラン-9」のデビューを「シリアでの経験により、システムの深刻な問題が明らかになった」と結論づけている。ともあれ、無人戦車が実戦デビューしたのは事実だ。海では、無人潜水艦などの研究が進んでいる。もちろん、究極的には戦争そのものを無くすことを目指すべきだ。目の前の現実は、その前段なのか、逆に向かっているのか。ロボットが人を殺し、ロボットがロボットを破壊するSFの発想は、もはや絵空事ではなくなっている。


今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

ロシア産ガス価格、CIS域外向けは今年72%上昇見

ワールド

米州でコロナ再拡大、米国けん引 WHOが対策強化求

ビジネス

中国乗用車販売、5月前半は前月比27%増 持ち直し

ビジネス

米国株式市場=景気懸念で急反落、決算嫌気しターゲッ

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:歴史で読み解くロシア超入門

2022年5月24日号(5/17発売)

ウクライナ侵攻で見せた不可解なほどの権威主義 政治・軍事・文化を貫くロシアの本質を歴史から理解する

人気ランキング

  • 1

    「心の準備が...」BTSジョングク、襟足の長い「80年代風」の髪型にイメチェン

  • 2

    「責任者を出せ!」コールセンター・スタッフに詰め寄るクレーマーに上司が放った爽快なひと言とは

  • 3

    『シン・ウルトラマン』を見て的中した不安

  • 4

    【戦況マップ】ロシア軍は数日でこれだけ占領地域を…

  • 5

    ウクライナのどさくさに紛れて「侵攻」を狙う、もう…

  • 6

    【映像】擬態したピューマと目が合ったハイカー、一…

  • 7

    動物園のアジアゾウ、溺れかけたアンテロープを救出…

  • 8

    100年ぶりの新しい細胞分裂様式「非合成分裂」は教科…

  • 9

    ロシア軍の最新戦車が破壊されたことが初めて確認さ…

  • 10

    BTSメンバーの「資産額」ランキング...1位のメンバー…

  • 1

    「責任者を出せ!」コールセンター・スタッフに詰め寄るクレーマーに上司が放った爽快なひと言とは

  • 2

    ウクライナのどさくさに紛れて「侵攻」を狙う、もうひとつの旧ソ連の国

  • 3

    【戦況マップ】ロシア軍は数日でこれだけ占領地域を失った

  • 4

    子供を解放し、母親も解放する日本の街──アメリカか…

  • 5

    「ウクライナを守る盾」、ロシア艦を撃沈した「ネプ…

  • 6

    「心の準備が...」BTSジョングク、襟足の長い「80年…

  • 7

    ウクライナ軍が使い始めた米M777榴弾砲の威力

  • 8

    【閲覧注意】廃屋の壁一面にうごめく数千匹のサソリ 

  • 9

    「ロゴさえあれば何でも買う」? 高級新作スニーカー…

  • 10

    【動画】ロシア巡洋艦「モスクワ」の「最期」

  • 1

    「責任者を出せ!」コールセンター・スタッフに詰め寄るクレーマーに上司が放った爽快なひと言とは

  • 2

    ウクライナのどさくさに紛れて「侵攻」を狙う、もうひとつの旧ソ連の国

  • 3

    【戦況マップ】ロシア軍は数日でこれだけ占領地域を失った

  • 4

    「どこなら女性は安全なのか」 インドで強姦被害の13…

  • 5

    プーチン病気説の決定打?どう見ても怪しい動画

  • 6

    子供を解放し、母親も解放する日本の街──アメリカか…

  • 7

    「性格と高齢期の認知障害には関連がある」との研究…

  • 8

    【映像】ショーの最中、荒れ狂うイルカがトレーナー…

  • 9

    「ウクライナを守る盾」、ロシア艦を撃沈した「ネプ…

  • 10

    【動画】ロシア巡洋艦「モスクワ」の「最期」

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
ニューズウィーク日本版ウェブエディター募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月