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NYで生きる!ワーキングマザーの視点

ベイリー弘恵|アメリカ

NYの大学教授が使うコロナ禍オンラインクラスのテクニック

©NY1page.com LLC グランドセントラル駅も閑散としている日が多い

2020年の3月から完全オンラインとなったNYの大学

今回は、コロナ禍でNYの大学や高校でオンラインクラスを続けていらっしゃる教授お二人に、ZOOM会議(オンライン会議)にて取材をさせていただきました。というのも、オンラインで授業をするとなると、真面目な生徒と怠ける生徒の差もでてくるし、テストの際にはカンニングの監視なども大変そうって理由で、私自身が関心をもったからです。

うちに3人いる高校生のオンラインクラスに対する姿勢を見ていても、生徒によってのちがいを見せつけられてます。真面目に朝早く起きて授業をうけ、時間をかけて宿題をやる娘二人とは対象的に、たまに寝坊してクラスをとばしたり、オンラインクラスを受けながらモニター2つの画面の一方ではゲームをオンラインでやっている息子。宿題に費やす時間もまったく子供たちそれぞれで違います。

教える先生のほうも、あらかじめ事前にYOUTUBEのビデオを用意しておいて見せた後に、オンラインで質疑応答を受け付ける先生もいれば、生徒たちがZOOMの授業開始からオンラインクラスに入って待ってるのに、先生のほうがオンラインに入ってこれず、あげくPCやネットのスピードがおそすぎて遮断し、オンラインクラスをあきらめる先生などなど。。。

先生のほうのオンライン技術力やオンラインクラスへの姿勢にもばらつきがあるようです。オンラインクラスというものは、生徒にとってだけでなく、先生にとってもチャレンジングなのだなぁ〜と思い知らされる日々なのです。

ーこれまで生徒と対面で授業をしていたのに突然オンラインクラスとなったことで、先生の側から戸惑いなどはありましたか?

▶和子教授

2012年にNYに来る前から、フランスやテネシーにいたことがあり、オンラインで、シンガポール、インド、香港、ベトナム、オーストラリアの学生たち日本語を教えていたんです。NYへ来てからもオンラインで他地域の方への授業は続けていたのですが、ニューヨーク市立大学(CUNY)の方にオンラインクラスをつくりたいからと声をかけて頂き、それでもしばらくは対面授業を担当していました。

実際にオンラインのみのクラスが開講できたのは、2017年になってからです。CUNYのブルックリン大学でオンラインのみで行う日本語コースを初めてつくらせていただきました。周囲からはオンラインでする外国語クラスが珍しいこともあって、当時は白い目で見られてましたが(笑)そのおかげでCUNYでは日本語をオンラインで教える珍しい存在になれたんです。

オンライン教育に興味をしめす外国語教師は少なく、同じくCUNYにある日本語プログラムがさかんなラガーディア・コミュニティーカレッジでもオンラインコースの設立の話があがりました。そのときにも興味をしめしたのがフランス語の教授と、実績のあった私のみ。ただその話も、教授会からの強い反対にあい、オンラインコース化の案は却下されました。ところが皮肉なことに、却下された直後からコロナのため完全オンラインクラスとなったのです。

コロナでオンラインクラスが始まる前から、オンラインで語学を教えている外国語教師は確実にいました。また、日本では導入事例が少ない反転授業という教授法があるのですが、実はオンラインの授業をつきつめていくと、この二つの相性がとても良いことがわかっています。

オンラインで反転授業をする第一人者が私の大学院の恩師で、SOFLA(言語教育のための同期オンライン※反転学習アプローチ)という教授法を開発し、ウェビナーや教師用のワークショップでこの方法を広めているんです。年明けにも世界中のTESOLの先生が集まる5週間のワークショップでSOFLAはセクションを一つ担当することになっています。私も恩師と一緒にモデレーターの一人として参加することになっています。

SOFLAリンク

※反転授業に関しては、次回、同インタビュー続編にてとりあげますが、簡単に解説のみ・・・ flip teaching or flipped classroomは、ブレンド型学習の形態のひとつで、生徒たちは新たな学習内容を、通常は自宅でビデオ授業を視聴して予習し、教室では講義は行わず、逆に従来であれば宿題とされていた課題について、教師が個々の生徒に合わせた指導を与えたり、生徒が他の生徒と協働しながら取り組む形態の授業です。

iStock-1218096209.jpg ©iStock

▶美恵子教授

私が教えているジョンジェイ大学の外国語学部では、数年前からオンラインのクラスを増やしていこうという話がでていて、教師にはオンラインで教えるためのコースをうけ、資格をとりましょう!と奨励されていたんです。ただその主な理由が、教室の確保のためでした。学生の数が増える一方で、物理的にクラスルームの数を確保するのが難しくなってきたんです。

それに従い、数年前からフランス語やスペイン語のオンラインのクラスが、※オンデマンド型の授業ですでにいくつかありました。こちらでは asynchronous online course と呼ばれていますね。なぜその時に資格をとらなかったのかというと、直接、学生に会って話すのが好きなので、自分には、あまり関係のない事かなと思っていたのです。今、思えば「備えあれば憂いなし!」でワークショップに参加していればよかったです。

コロナで三月の半ばから、対面授業ができなくなって、強制的に完全オンラインクラスになったわけですが、オンラインで教える技術も経験もなかったので、どう教えたらいいものかと本当に焦りと不安でいっぱいでした。多分、ほとんどの大学教師が同じ気持ちになったはずだと思います。

幸いなことに、オンラインクラスに明るい和子先生がニューヨーク市立大学のキャンパスで教えている日本語教師のために、オンライン教育の勉強会を開いてくださると聞いて、わらにもすがる思いでとびつきました。それまでZOOMも導入されてなかったので、ZOOMのやりかたから、Blackboard Collaborate Ultraの使いかたなど、一から教えていただきました。

BlackboardやMoodleといったLearning Management System (※LMS)は、これまで使ってきましたが、「明日は試験だから、がんばってください!」などといった学生へのお知らせとか、授業のパワーポイントをアップするだけでした。それなので、他にもいろいろとオンラインで使える機能を知っていくことは、たいへん勉強になり、とても楽しいです。

※オンデマンド:オンライン上でユーザーの要求によって、ストリーミングで資料や写真、音声、動画などがリアルタイムで表示されること。
※LMS(Learning Management System 学習管理システム) :eラーニング(electronic learning:インターネットを利用した学習形態)と、情報技術を用いて行う学習や学びの実施に必要な、学習教材の配信や成績などを統合して管理するシステムのこと。

▶和子教授

学校で教えている先生たちって、結局は勉強が好きで学ぶことが好きなんだなぁと今回のことで思いました。だから、こうしてオンライン教育という新しいことを学ぶことも深く勉強し、楽しめるんだと思います。逆に、これまで長年、対面授業を続けてきた定年間近だった先生の中には、オンラインで使うツールを使いこなすことができず、もうコレ以上は無理だということでリタイアされた方もいらっしゃいます。

ーオンラインの教育って私が個人的にイメージしていたものは、オフィスでZOOMを使って、パワーポイントやエクセルとかで作った資料を画面シェアして見せながら解説するみたいに授業を進めるっていうイメージだったのですが。教育のために特化したオンラインで使うアプリやツールというものがあるのでしょうか?

▶和子教授

はい。一言でオンラインと言ってもツールによって用途は様々なんですよ。管理を目的とするツールは、テストをオンラインでうけさせたり、宿題をアップロードして提出させたり、その結果がすべて一つのツールで管理できます。また、ZOOMを使いながら、クラスをインタラクティブにするために使う補助的なオンラインツールもあります。プロジェクトや課題をあたえ、生徒達に日本語を使わせたり、理解させたりするために使うツールです。

目の前にツールがならべられても、それを使うかどうかは最終的には教室内にいる先生しだいということになります。先生たちは学ぶのが好きなんだなぁと感じたのはまさにこの点でして、春学期に始まった一斉オンライン教育の段階では、ほとんどの先生方がZOOMという言葉すら知らなかったのに、夏休みを使ってワークショップに参加したり独学で学ばれたりする教師が私のまわりにはたくさんいらっしゃいました。夏休み明けには、みなさんオンラインツールを普通に使って授業されている方が実に多かったです。

ーオンラインクラスで心がけていることなどがありますか?

▶美恵子教授

オンラインクラスでは、対面授業のときと同じレベルでクラスに関心を持てるよう、生徒たちがオンラインだから大変だな〜と思わないように、心がけて授業を進めています。オンラインにあるいろいろなツールを使うと、さまざまな面でインタラクティブ(双方向的なコミュニケーション)な授業ができるんです。

たとえばビンゴゲーム。対面授業では、簡単な文型練習をする目的でよく登場させていました。その日の授業のテーマが「きのう何をしましたか?」だったとします。ビンゴには横4つ縦4つ、よくある日常の一コマの描かれた絵が合計16個あります。コーヒーを飲んでいる絵でしたら、「コーヒーを飲みましたか?」と質問して、答えが「はい、飲みました。」ならX(エックス)を書いていくといったアクティビティです。

私はいつもダイソー(日本でおなじみの100円ショップは、NYにも2019年から進出している)のオモシロ消しゴムを賞品にしてたので、生徒は「消しゴム~!消しゴム~!」と、とりつかれたようにビンゴを目指していました。オンラインクラスを始めたときはこういった事はできなくなってしまうのかなと寂しく思っていましたが、実はオンラインでも可能なのです。

各生徒にビンゴシートをチャットでシェアして、ブレイクアウトルーム(ZOOMで小部屋にわける機能)にわけて、ブレイクアウトルームを自由に行き来できるように設定すれば、生徒はクラスメートと十分交流できます。ちなみにビンゴで、けっこう盛りあがります。大学生なんですが、こういったシンプルな事でも楽しいみたいですね。ただしオモシロ消しゴムをお渡しできないので、学生には、ツケがだいぶ溜まっています(笑)。

ZOOMブレイクアウトルームの使い方

▶和子教授

私が最初にオンラインコースを始めたころに一番大変だったのは、今まで対面授業で使っていた教材や教案がそのまま使えないことがあるということだったのです。オンラインだからキャンパスに行かなくてもいいのですが、その分、生徒達に何をしてもらいたいのかを、わかりやすく伝える必要があります。テストを受けさせるにしても、対面授業ではテストを人数分コピーして渡せばよかったのですが、オンラインのクラスでは生徒に会わないわけですから、テストをLMSに入力しなければいけません。

3月の一斉オンラインの時、CUNY内の多くの日本語教師が、教材不足によって私が抱えていた困難を経験することになることは容易に想像できました。そこでCUNY内にある日本語プログラムが盛んな大学の日本語プログラムのディレクターたちと相談し、オンラインでも対面式に戻ってからでも使えるNYに特化した教材をつくり、お互いに評価しあいながら、教材バンクをつくっていこうという話がもちあがり、プロジェクトとして大学間の垣根をこえた交流がはじまったのです。国際交流基金からの助成金もいただき、教材開発のプロジェクトがはじまりました。

教師たちの能力は、属人的になる傾向が多いのです。ところが、この方法を取り入れたことにより教師同士が、オンラインクラスで起こるちょっとした悩みをお互いに相談したり、便利なオンラインツールを紹介しあったりする交流が生まれました。

外国語教育をより※コミュニカティブにしていかなければいけないという流れとの相乗効果もあり、教師達がオンラインという環境下で、どのような工夫をすれば学生にとって意味のある授業が提供できるのか、ゼロベースで考える機会が与えられたんだと思います。

コロナ禍でなかば強制的にオンライン教育は始まりましたが、オンライン教育のメリットを感じた先生方は、実のところ多いと思います。オンライン教育が市民権をえた今、次に迎える教育現場ではテクノロジーの恩恵を、さらに享受できるものに変わっていくのだと思います。

※コミュニカティブアプローチ (Communicative Approach):言語学習観の一つ。外国語教授法として数えられることもある。教授法としては、コミュニケーション能力の育成を中心とし、情報の格差(インフォメーション・ギャップ)を埋めることがコミュニケーションの本質であると規定する。機械的な練習が中心のオーディオリンガル法への批判から発展した。 また、2000年代に入り「フォーカスオンフォーム」の観点から、このコミュニカティブアプローチに文法指導を取り入れたものが再度注目を浴びている。英語圏では「Communicative language teaching (CLT)」という名称で呼ばれることも多い。

【プロフィール 敬称略、順不同】

スパーベック美恵子(スパーベックみえこ)
神奈川県出身。1995年にペンシルバニア州フィラデルフィアのテンプル大学を卒業後、日本に戻り、英会話スクールで英会話教師として勤務。その後、アメリカ人との結婚を機に来米。ミネソタ州ミネアポリスの語学学校で日本語教師となり、多くの客室乗務員に日本語を教える。2001年ニューヨーク市立大学大学院言語学部に入学。10年に同校を卒業後、同年9月アデルファイ大学の言語学兼任教授に就任。13年からジョンジェイ大学で日本語を教える。現在2校を兼任。

齋藤和子(さいとうかずこ)
ニューヨーク市立大学(CUNY)の非常勤講師 兼 公立中高の日本語教師。CUNYのオンライン教材開発プロジェクトCCI-2020の発起人兼プロジェクトリーダー。CUNYブルックリン大学にて2017年より100%日本語オンラインコースを開講。年明けにはElectronic Village Online 2021にてSOFLA (Synchronous Online Flipped Learning Approach:同期型オンライン反転教育アプローチ、Marshall) ワークショップに、モデレーターとして参加する予定。92年日本語教育能力検定試験合格。同年、国際交流基金主催日本語教師派遣JALEXプログラムの第一期生としてインディアナ州日米協会に派遣された経歴を持つ。

【関連リンク】
スパーベック美恵子教授のプロフィール(英語)
齋藤和子教授のプロフィール(英語)

 

Profile

著者プロフィール
ベイリー弘恵

NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。

NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com

ブログ:NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

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