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NYで生きる!ワーキングマザーの視点

ベイリー弘恵|アメリカ

CAに干ばつの可能性は?イエール大学、地球物理学者の唐戸教授に問う

©iStock

前回に引き続き、イエール大学、地球物理学者の唐戸教授に問う!

2014年にヨーロッパへ旅行に行ったとき、ポルトガルで開かれた水の会議に出たという日本人男性に出会ったことがありました。その方が、「カリフォルニア州とかは、一部の地域で干ばつになるリスクがある」というお話をされていたのですが。


おそらくその日本人男性が2014年に出席したと思われる会議の資料を検索で見つけた。
7th meeting of the International Network of Drinking-water Regulators

──水の専門家としては、干ばつに関してどのような見解をお持ちですか?

「海の水が蒸発して、陸に雨として降ってくるので海水がなくならない限り、全地球規模での干ばつは起こらないでしょう(もちろん、地域的には起こる可能性はあります)。なお、海水は数億年の時間で考えるとほぼ安定に存在し、近々無くなることはないだろうという論文を私は最近、発表しました。ご安心ください(と言っても私の研究は長い時間スケールでの話ですけど)」

──干ばつがおきれば、地面を掘ったら井戸水が出てきますか?

「掘ったら水は出てきますが、干ばつになると井戸水もなくなります。ものすごく深く掘ると出てくるでしょうが、そこまで掘るのにはお金がかかる」

──つまり、掘るよりも他の地域から買うほうが安いし、早いということですね。すみません、話が本題の「おかしな気候が日常化している?」からそれてしまいました。

「気候問題に関してなのですが、それに関連している学界が、私にはまずい方向にいっている点がみられます。まず、スーパーコンピューターで大規模な計算をしたからその結果が正しいと多くの人たちが思っていることです。このような計算には多くの仮定があって、その仮定(あるパラメータの数値)を変化させると結果は容易に変わります。二酸化炭素の気候への影響を世界に先駆けて解明された真鍋さんも、力ずくの計算だけを重視する最近の学界の風潮を疑問視する発言をされています。

『もっと興味(好奇心)に基づいた研究をやれ』、つまり、『自然の本質についての深い研究をじっくりやれ』、という発言をお聞きしました。このこと以上にもっと私が心配しているのは、最近は気候問題が政治の問題にされてしまっており『気候問題の科学的解明はもう終わった。これからは、どう温暖化に対応するのかという現実的な(政治的な)問題だけに集中すべきだ』という意見が学界の大半をしめていることです。反対意見をいうことが困難になっており、中世を思い起こされます。これは科学にとっての深刻な危機です。

気候や、地震発生などの自然現象は我々の生活に直結する重大な現象ですが、多くの要因が絡んでいて、その真相を探るのはなかなか一筋縄ではいきません。こういう状況の中で科学者は現在の知識で気候(や地震発生)についてどこまでわかっているのかを広い観点から市民に知らせること、そして、何が今もっとも重要な問題なのかを科学的な客観的な観点から明らかにした提言をすべきです。

これは自明のことのように見えますが、実際に行うのは簡単ではありません。最大の問題はこのような問題に膨大なお金がからんでいることです。お金が人々の判断に大きな影響を与えているのです。政治家だけでなく科学者の場合も、科学的、社会的な観点だけでなく、お金に影響された正しくない見解を表明することがあります。科学者のいうことがそのまま全て正しいわけではありません。一般の市民もいろいろな科学者の発言を批判的に吟味し、自らの意見を持っていただきたいと思います。学校教育ではこのような判断力を養うことが大切です」

karato1.png【プロフィール】
からとしゅんいちろう
1949年、福岡生まれ。1977年東京大学博士号過程修了、理学博士。専門は、地球惑星内部物理学。77年から89年まで、東京大学海洋研究所の助手。81年から3年間オーストラリア国立大学研究員、89年から2001年までミネソタ大学の準教授、教授を歴任。2001年からイエール大学教授として、研究を続けている。99年、日本学士院賞、95年フンボルト賞(ドイツ)、06年ベニング・マイネス賞(オランダ)、14年、ラヴ・メダル(ヨーロッパ地球科学会)、16年、レーマンメダル(アメリカ地球物理学会)を受賞、20年、アメリカ芸術科学アカデミー会員へ選出。



 

Profile

著者プロフィール
ベイリー弘恵

NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。

NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com

ブログ:NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

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