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平野美紀|オーストラリア

【新型コロナ】メルボルンの事例にみる感染拡大しやすい都市(1)

ビクトリア州議事堂の前を通過し、旧財務省前を横切るトラム。メルボルンは街中を縦横無尽にトラムが走っている。(2020年2月筆者撮影)

オーストラリアは、3月に国境を閉鎖し、メルボルンのあるビクトリア州では感染拡大が始まった3月24日からロックダウンに入った。その後、ほぼ感染が抑えられているとして規制を緩和し始めた矢先の6月、メルボルン周辺で再び感染拡大が始まった。

一時は1日の新規市中感染ケース725を記録し、オーストラリア国内の死者数907(2020/11/22時点)のうち、ビクトリア州だけで819と、そのほとんどを占めている。(参照

Total-COVID-19-cases-and-deaths-by-states.pngオーストラリア保健省:Total COVID-19 cases and deaths by states and territories(※クリックで拡大)

前回のコラムで書いたように「検疫隔離ホテルでの失態」がビクトリア州での感染拡大を招いたのは間違いないが、その他にも気になる点がいくつかある。そこで、主にメルボルンだけで感染拡大したその他のファクターについて、異なる観点から2回に分けて考察してみたいと思う。

人口の多さとの関連性はあるか?

メルボルンで再び感染アウトブレイクが始まり、メルボルン都市圏が再度ロックダウンとなった頃、シドニーでもメルボルンからやって来た運送会社勤務の男性からクラスターが発生し、感染者数が2桁に増加。一時は「メルボルンの二の舞になるか?!」と騒ぎになった。(参照

しかし、結論からいえばそうはならず、その後もシドニー周辺では、ぽつぽつと感染者がでても1~5件程度に抑えられ、メルボルンのように急速に拡大することはなかった。実際、このコラムを書いている本日 2020年11月23日 も新規市中感染は0。連続16日間、新規市中感染無しが続いている。

これは、ニューサウスウェールズ州のコロナ対策が功を奏していると言ってしまえばそうなのだろうが、もし、人口が多い都市ほど感染が拡大する確率が高いのだとしたら、国内最多のシドニーでもそうなる可能性が高いはずだ。ちなみに、現在の推定居住人口は、シドニー約530万人、メルボルン約500万人となっている。(参照

では、メルボルン周辺だけで爆発的に感染が拡大したのはなぜなのか?

気になる点がある...というのは、1年のうちに何度もメルボルンへ行き、現地の状況を知るシドニー在住の筆者(実はメルボルンのあるビクトリア州政府観光局の日本語サイトも書いている...)からみると、メルボルンのほうがシドニーよりも「密」状態ができやすい都市構造に思えるからだ。人口よりも都市構造そのものがネックになっている可能性はないだろうか?

公共交通機関による人々の移動

メルボルンはトラム(路面電車)が縦横無尽に走り、CBD(市内中心部)へのアクセスが容易で手軽なため、多くの市民がトラムを利用する。歴史あるメルボルンのトラム・ネットワークは、24路線、総距離250kmと世界最大を誇る。(参照)

このトラムは、乗車システムがシンプルで路線もわかりやく、とても便利だ。CBD内は無料な上、停留場も多く、メルボルン周辺の四方八方に住む人たちがどこかで集会するとしたらCBDで!となりやすく、CBDに人が集まりやすい構造といえる。

一方、シドニーはどちらかというとバスがその代わりを務めていて、路線も複雑で乗り換えが面倒なことあり、自家用車で移動してしまう人も多い。

もともとの市民気質も手伝って、シドニーでは、新型コロナが流行し始めた2月時点で、昨年12月に満を持して開通したCBDと郊外を結ぶライトレイル(メルボルンのトラムに当たるが路線は数本のみ)はガラガラ、オペラハウスの地下駐車場は満杯という有様だった。

飲食店の形態による密状態の形成

melbourne_street.jpgメルボルンの観光名所でもあるカフェ通り(2020年2月筆者撮影)

メルボルン中心部は、車が入れないほど細くて狭い路地が碁盤の目のように張り巡らされており、こぢんまりとした雰囲気の良いカフェやレストランが多い。これこそがメルボルン散策の魅力なのだが、狭い店内にたくさんの人が集ったら、相当な「密」だろう。

また、メルボルンは中心部にこれまた隠れ家のような小さなバーがたくさんあり、どちらかというと夜型のシティライフ都市といえると思う。深夜でもトラムが走っており、夜のCBDの人の多さは、ビジネス街としての色のほうが濃いシドニーとは比べ物にならない。このあたりについては、「シドニーよりメルボルンのナイトライフのほうが充実している」と感じているオーストラリア人も多いようだ。(参照

飲酒を伴う席では、密になりやすいばかりでなく、やはりどうしても羽目を外す人が多くなりがちなのは万国共通である...

住居形態と人口密度、居住者の年齢層というファクター

メルボルンは、CBDからさほど遠くない場所に高層の公営住宅がいくつもあり、低所得の移民家族が狭い空間に大人数で暮らしていることも指摘されている。高層の居住ビルディングは、出入口が主にひとつしかないうえ、エレベーターやランドリーなどの共有部分も多く、建物内で感染が広がる可能性が高い。

日本でも報道されたので覚えている人も多いと思うが、小さな窓しかない高層の公営住宅でクラスターが発生し、建物全体をロックダウンしたことから、ビクトリア州2度目のロックダウンが始まった。(参照

こうした住居形態(高層住宅の狭い間取りに大人数が暮らす)も一因となり、現在、インナーシティ・メルボルンと呼ばれるCBDに近いエリアが、豪国内で人口密度が最も高くなっている。(参照

また、メルボルンは、CBDにメルボルン工科大、CBDに隣接してメルボルン大といった二大大学があり、周辺に学生や若い人が多く、年齢が上の層に比べて行動が活発なことも、拡散させる要因として少なからず影響があるように思う。ちなみに、2006年の国勢調査によるとメルボルン中心部周辺の居住者の平均年齢は27歳、同シドニーは30歳となっている。(参照1, 参照2

次回では、都市構造のような物理的ファクターとは異なる観点から考察してみたいと思う。(続編・第2回はこちら

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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