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カリフォルニア法廷だより

伊万里穂子|アメリカ

我慢を知らないアメリカ人

AndreyPopov-istockphoto

アメリカに来て驚いたのが、アメリカ人って我慢という事を習わないで育った人たちなんだな、という事です。

日本人なら誰もが小さい頃から言われて育ったであろう「人様に迷惑をかけるんじゃないよ」という発想があまりないのです。

同僚とランチを食べていて仕事の愚痴を話していても、この人達は自分の権利は絶対に主張するけど、我慢ということは全くするつもりが無い人達なんだな、と毎度ながら思います。

誰かが病欠したら出勤してきている他の誰かがその人の開けた穴をカバーするのは当然の事で、それは自分の仕事を中断しなくてはいけないけど、お互い様というもので、仕方がない、我慢するしかないのです。

それをなんであの人月曜日に病欠するとか信じられない。今日やる予定だった仕事できないから、上司に散々文句いってメールで丸投げした!と言うのです。そんなの自分の仕事なんだから、ちょっと頑張れば終わらせるはずなのに、そこは上司に当てつけのように丸投げをして責任放棄らしいのです。

それでいて、来週の水曜は息子の誕生日なんだけど、休暇申請却下されたから、病欠するんだ、なんて自分は言っているのです。自分が自分の権利である病欠を使うという事には全く遠慮はないらしいのです。

先週ラジオ局の人がインタビューを受けていて、今の若い世代はCDどころかItunes で育ったから、一曲を最初から最後まで聴く、と言うことができない。じっと5分間座っている事ができないそうです。なのでラジオで流す曲も流行りの曲を上手く短くしてすぐにサビになるように5分以下にしておかないと、ラジオのチャンネルを変えられてしまう、という研究結果があるらしく、困っている。との事。

確かに自分も通勤中の車の中で自分のiTunesであまり好きではない曲が出てくると秒でスキップするし好きな曲でも半分くらい聴いたら、もういいや、次、と次にスキップしてるや、と思います。確かに昔はカセットテープなどではなかなかそういう事はできないから、曲の初めから最後まで聞くしかなかったのです。テクノロジーの発達に伴って私たちが失ったものというのも割と大きいんだろうな、と思います。

メールやテキストも送った瞬間、すぐに返事が来て当たり前だと思ってしまう風習。相手が何をしているか知らないのに、自分の送った物には瞬時に返事が来ないと腹を立ててしまう風習。なんでもすぐに手に入る便利な世の中は相手からの返信すら「今」来ないと腹が立つ、というあまりに理不尽なそれでいて簡単にその思考ループの罠にハマってしまう現代社会。

これは陪審員裁判でも、裁判員がじっと集中して話を聞いていられる時間のスパンが毎年短くなっている、と言うのは見ていて分かります。若い世代ほど顔にあからさまに「めっちゃつまんないんですけど。この人いつになったら喋り終わるわけ?」と不満げな人が多く、こう静かに座ってお話しを聞きましょう、と言うことを幼稚園で習わなかったのか、と思いながら見ています。

幼稚園で手はお膝、お話は静かに聞きましょう、と刷り込まれて育ったし、少し我慢しなさい、と耳にタコができるほど言われ続けて育ったので、多少の不都合はまあお互い様だし仕方がないや、と思いやり過ごしているのですが、それが「だからアジア人はおとなしい」とナメられる理由でもあるらしいのです。

日系人が収容所に入れられてとんでもなく酷い生活を強いられても、みんなで我慢、という標語を掲げて耐え凌いだ、という事を「日系一世、我慢」という本で読みましたが、毎回大震災などが起きて日本人が避難所で静かに食べ物を頂く列に並び、バナナは小さいお子さんや高齢者にも食べやすいので、できればそういう方に回してあげてください、という声がけに素直に同意して、自分がもらえる最小限の物をもらって争うことなく穏やかに配布が行われているシーンが海外のニュースで流れると海外では、日本人はああいう時に暴動を起こさないで黙って並べるのがすごい、と感嘆されるのです。

コロナが先進国なのにアメリカでなかなか押さえ込めていなのは、この我慢できない国民性もあるんだろうな、と思います。マスクなんて面倒だ嫌だ。人と集まれないなんて嫌だ。何事も我慢して耐え忍ぶ、という事をしないで育ってきた大人だらけの国ですから。仕方がない、少しの我慢だ、自分が勝手なことをして人様に迷惑をかけてしまってはいけない、なんて全く思わない人たちの集団ですから。

譲り合う精神、我慢する忍耐力、昔の日本人から見たら、今の日本人は、と嘆かわしく思われるのかもしれませんが、海の向こうから見れば、今の日本人の道徳心でもへえーと思われるものであり、なんとか守って欲しいと思うばかりです。

買い物カートに乗せた子供がわがままをいって大泣きしているのを叱らずにさせたいようにしているアメリカ人を見るたびに、ああこうやってまた我慢できない大人が1人増えていくんだな、と思って見ています。

 

Profile

著者プロフィール
伊万里穂子
大学中退後カリフォルニアに移住。海外で手堅い職業をと思い立ち公務員に。裁判所の書記官になる。勤続18年目たった一人の日本人書記官として奮闘中。ブログ「リフォルニア法廷毒舌日記で日々社会の縮図とも言える法廷内で繰り広げられる人間模様を観察中。著書:「お手本の国の嘘」新潮新書

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