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イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

あれから4年、イタリア中部地震 被災地の状況

地震当時のハロウイン飾りが翌夏も残るノルチャのショーウィンドウ 2017/7/8 photo: Naoko Ishii

ウンブリア州ノルチャの場合

 2016年10月30日、早朝襲ったM6.5の大きな地震に、同年8月24日以来、イタリア中部地震の度重なる揺れに耐えてきたノルチャの聖ベネデット教会が、正面の壁を残して崩れ落ち、多くの建造物が崩壊しました。

 ウンブリア州の町、ノルチャは、8月24日の地震では、ラッツィオ州のアックーモリ、アマトリーチェと共に震源となり、10月26日の地震では、ノルチャのすぐ近くにあるマルケ州の2村が震源となりました。にも関わらず、ノルチャの歴史的中心街では、それまでは幸い、倒壊する家屋が他の被災地に比べて少なかったため、地震報道では、「1979年の地震後、耐震基準を守って再建が行われたおかげだ」としばしば言われていました。そのノルチャでも、10月30日にはさらに大きな被害があリ、シビッリーニ山脈の高原にあるカステッルッチョ・ディ・ノルチャでは住居や店の屋根や壁が崩れ落ち、中心街は、今も立ち入り禁止となっています。

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ノルチャ、正面を残し崩れ落ちた聖ベネデット教会 2017/7/8 photo: Naoko Ishii

 地震の翌年、2017年7月に、地震後初めてノルチャを訪ねたとき、思いがけずすでに開業している店があり、観光客も戻っていたので驚きました。けれども、町を取り巻く城壁の門の近くにある店には、10月30日の地震の際のものと思われるハロウィンの飾りつけがまだ残っていました。

今も再建が滞り、多くの被災者が仮設住宅に

 4年前のイタリア中部地震は、シビッリーニ山脈に沿って地下に伸びる活断層に動きによって引き起こされたもので、震源となった複数の市町村が、マルケ・ウンブリア・ラッツィオ・アブルッツォ4州の州境に近い山中、あるいは山あいにあるために、被害はこの4州に及んでいます。

 春には花、夏には緑、冬には雪景色が美しいシビッリーニ山脈国立公園を、わたしたちは地震前は、しばしば訪ね、山を歩いていました。2016年の地震によって、被災地の多くの道路で、断裂や土砂崩れ、土石流、崖崩れなどが起こり、今ではかなりの道路が通行可能になりましたが、まだ工事が終わらず、夏の間だけ通行できる道路や、地震以来いっさい通ることができない道路もあります。

 シビッリーニ山脈国立公園では、今も、道路ばかりではなくトレッキングコースも復旧されていないところが多いため、訪ねる時は出発前に、しばしば更新されるこちらの地図で、通行できるかどうかを確認しています。地図中、赤で塗りつぶされているのは、地震から4年後の今になっても、中心街の大半、あるいはすべてが立ち入り禁止となっている市町村です。

 マルケ州のヴィッソやカステルサンタンジェロ・スル・ネーラも、ウンブリア州のカステッルッチョ同様に、いまだに亀裂が入った建造物がそのままで、中心街に入ることができません。3村とも、自然が豊かな美しい小村で、地震の前は山を訪ねる際、よく立ち寄っていました。かつて中心街にあった店のいくつかは、これらの小村でもノルチャでも、今は郊外の仮設店舗で営業しています。

  マルケでもウンブリアでも、4年後の今もなお小さな仮設住宅に暮らす被災者が大勢います。標高の高い山にあって冬は冷え込み、新型コロナウイルス感染拡大防止のためのイタリア全土封鎖が行われていた間は、狭い空間で家族が暮らすことを余儀なくされ、今も我が家に戻ることができない。住宅の修復や再建が、煩雑な行政手続きのために進まないことを憤る被災者の方の声を、この数日は、ウンブリアの地方ニュースが、被災地訪問・インタビューで、伝えていました。

 この春は、ようやく始まったばかりの再建に向けての動きが、3月上旬のイタリア全土封鎖のために凍結となりました。夏になって、被災地の再建を急ぐために行政手続きを簡素化するための措置が講じられ、これで再建・復興を進めていくことができると、最近の地方ニュースで、村長や住民が語っています。

 1997年のウンブリア・マルケ地震で被災したウンブリアの市町村には、ノチェーラ・ウンブリアのように、再建に十数年かかり、再建が終わった頃には、大勢の住民がすでに郊外など、他に居を構えてしまっていたという例もあります。

 この数日、イタリア各地ではさらに新型コロナウイルスの感染が急速に増大し、政府が、特に感染が急増している地域に対して、さらに厳しい規制を課す首相令を発布するべく、動き始めました。ウンブリアもまた、感染が著しく増加している州の一つです。規制が強まることとなっても、ようやく進み始めた再建が滞ることがないよう願っています。

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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