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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

ユネスコ世界遺産「コロンビアのコーヒー産地の文化的景観」10周年!

©️YouTube 10 Años Paisaje Cultural Cafetero de Colombia, la magia es vivirlo (Federación Nacional de Cafeteros de Colombia)

10年前の2011年6月25日、コロンビアのコーヒー生産地の景観がユネスコの世界遺産として登録されました。

「コロンビアのコーヒー産地の文化的景観」には、コロンビア西部のカルダス県・リサラルダ県・キンディオ県・バジェデルカウカ県の4つの県の中にある地域で形成されており、この地域には7万9千人以上の生産者が約17万haの土地でコーヒーを栽培しています。

この地域の共通点は、アンデス山脈に沿って分布されているという点。コロンビアのコーヒー農園の多くは山の急斜面に張り付くように広がっています。平地よりも標高が高く1日の寒暖差が大きい山の斜面の方が美味しいコーヒーができるため、この地域では150年以上前からコーヒー栽培の文化が受け継がれてきました。

この一帯の地域は「エヘ・カフェテロ(コーヒーの軸)」とも呼ばれ、この歴史と美しい景色に惹かれて国内・海外から多くの観光客が訪れることから、観光業としてもコロンビアの経済を支えている重要な地域ともいえるでしょう。

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リサラルダ県ペレイラで泊まったホテルからの風景(筆者撮影)

 

コーヒー産地の文化的景観

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©️YouTube 10 Años Paisaje Cultural Cafetero de Colombia, la magia es vivirlo (Federación Nacional de Cafeteros de Colombia)

コーヒー産地の文化的景観にはロゴがあり、このロゴの中には美しい景観を作り出しているファクターが描かれています。

手・コーヒーの木・建物・山・ハチドリと蝶・カエル・グアドゥア・花が描かれていますが、全て見つけることができますか?

ではこれらひとつひとつを見ていきましょう。

 

コーヒーを収穫する手

ロゴの中央に描かれているのはコーヒーを収穫する手。

コロンビアでは山の斜面でコーヒーが栽培されているため、機械で収穫を行うことができません。収穫期になるとたくさんのコーヒーピッカーが産地に集まり、一粒一粒手で収穫していくのです。

枝をかき分け作業するので手は傷だらけ、毛虫などに刺されてミミズ腫れは絶えません。爪は真っ黒になり、とても綺麗な手とはいえませんが、これがコーヒー農家の証なのです。

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細かい作業となり指先の感覚も重要となるため、手袋はあまり使いたくないのです。(収穫作業中の筆者撮影)

 

コーヒーの木

世界で飲まれているコロンビアコーヒーのほとんどが2ha以下の農園で栽培を行っている小規模農家たちによって作られています。

コーヒーの実を見たことがない方も少なくないと思いますが、コーヒーの実は真っ赤なさくらんぼみたいな見た目をしていて、この中に入っている種を煎って細かくしたものが飲料としての『コーヒー』の原料になります。

このコーヒー産地の文化的景観にはこのコーヒーの木が一面に広がり美しい景色を生み出しています。

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先日コーヒー収穫中に撮影しました(筆者撮影)

 

建物

ロゴの右上に描かれているのはコーヒー生産地にある一般的な民家のバルコニーを表しています。

壁や柱はカラフルに塗られ、バルコニーにはたくさんの花が飾られているのが特徴。

バルコニーからコーヒーカップ片手に、道ゆく人を眺めているセニョーラの姿をこれらの地域ではよく見かけます。

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キンディオ県サレントの観光地の様子。週末や連休は世界各地からの観光者で溢れかえります(2018年筆者撮影)

 

このコーヒー産地の文化的景観を作り出しているのはなんといってもアンデス山脈の山々。

乾季と雨季だけでなく、朝晩と昼の気温のメリハリが生み出す甘みと酸味こそがコロンビアコーヒーが美味しい理由の一つです。

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私が住んでいるアンティオキア県フレドニア。ここにもコーヒー畑の絶景が広がっています(筆者撮影)

 

ハチドリと蝶

コロンビアには3300種類の蝶が生息しており、鳥類の多様性においては世界一(1921種)を誇ります。

特にこれらの生物は自然豊かなコーヒー産地にも多く生息しており、バードウォッチングを楽しむ観光客が大きな望遠鏡をかついで訪れるのがこの地域なのです。

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コーヒー畑では色とりどりの蝶を見ることができます。(筆者撮影)

 

カエル

カエルは「レインフォレスト・アライアンス認証」と言われる、持続可能性のある製品に与えられる認証マークに使用されているように、環境保全のシンボルとも言われている生物です。

近年問題となっている地球温暖化をはじめとする環境問題が今後のコーヒー栽培にも大きく影響を及ぼすことから、コロンビアのコーヒー農家たちも代々受け継いできた歴史を守るために、これらの問題解決に真剣に取り組み始めています。

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除草剤などを使用せず木の葉や木の枝など自然のクッションで湿度が保たれているコーヒー畑にはカエルも生息しています(筆者撮影)

 

グアドゥア

グアドゥアは聞いたことがない方が多いと思いますが、竹の一種で日本でよく見られる竹よりも太いのが特徴です。

二酸化炭素を吸って空気を浄化する作用もあるらしいので、コーヒー産地の空気が美味しいのはこのグアドゥアのお陰なのかもしれません。

とても頑丈のため、このグアドゥアを使ってコーヒーを乾燥させるための建物を造ったり、細かく裂いてカゴや帽子などの工芸品を作ったりもします。

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我が家のグアドゥア畑(筆者撮影)

 

あまり知られていませんがコロンビアでは切り花の輸出も盛んで、その輸出量は世界2位を誇ります。カーネーションにおいては世界1位の輸出量を誇り、日本の母の日に売られているカーネーションの多くがコロンビア産と言われているほど。高地で栽培されるため、花が大きく色が鮮やかに咲くことが人気の秘訣なんだそうです。

コロンビアは通年気候が安定しているため、年間通して花を楽しむことができます。コーヒー農家の軒先には常に色とりどりの花が飾られているのが特徴で、男性がコーヒー農園で働いている間に女性が家事や花の世話をするというのが、昔ながらのコーヒー産地の生活風景だったりします。

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コロンビアの国花カトレア(筆者撮影)

 

コロンビアコーヒー生産者連合会の94周年

6月25日は「コロンビアのコーヒー産地の文化的景観」のユネスコ登録10周年記念。そして、その2日後の6月27日はコロンビアコーヒー生産者連合会が創立94周年となるということで、この週末はコロンビアのコーヒー業界はお祭りムード。

コロンビアコーヒー生産者連合会(通称FNC)は1927年、コーヒー生産者たちによってアンティオキア県で設立され、今やコロンビア中のコーヒー生産者を取りまとめる巨大な非営利団体となりました。

各農園に技術者を派遣し技術指導をしたり、試験場では日々技術的な研究が行われていたりと、コロンビアコーヒーが美味しい理由は彼らの支えがあってこそだと思います。

先祖代々引き継がれてきたコーヒー産地の文化と風景を残しつつも、年々進化を続けるコロンビアコーヒー。今年の収穫では昨年を上回るほどの利益を上げることが予測されており、コーヒー産業は去年に引き続きコロナ渦で落ち込む経済を支える縁の下の力持ちとなりそうです。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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