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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

アフガン難民一時受け入れのコロンビアと既に抱えている難民問題

イメージ ©️iStock - Juanmonino

駐留米軍が撤退し、イスラム主義勢力タリバンが再び権力を握ったアフガニスタン。この出来事を受けて多くのアフガニスタン人が身の危険を感じ国外退避を望んでいます。

様々な国がアフガニスタン難民の受け入れを表明している中で、コロンビアのイヴァン・ドゥケ大統領は8月20日に4000人のアフガニスタン難民の一時受け入れを決定したことを発表しました。

既に隣国ベネズエラをはじめとする様々な国からの難民を抱えているコロンビア。犯罪増加や差別など多くの移民問題が騒がれている中での更なる難民受け入れですが、これについて現地でどのような報道がされているのかをまとめてみたいと思います。

 

今回の受け入れはあくまでアメリカでの移民ビザの手続きが終わるまでの一時的なものとされており、滞在期間は長くても180日間程度になると言われています。また4000人が一度に入国するわけではなく数回に分けてコロンビアに到着し、入国の際にコロナウイルスのPCR検査とワクチン接種、入国後の14日間の隔離を義務付けると発表されています。さらにコロンビア滞在中は外出はできますが労働やビジネス、教育を受けることはできないということで、移民に職を奪われることを恐れているコロンビア人にとってはこれはひと安心できる条件なのではないでしょうか。

 

今回この難民一時受け入れの一番のポイントとなるのは「アフガニスタン人の滞在に必要な費用は全てアメリカ政府が負担する」という点だと思います。

コロンビアに一時滞在中、アフガニスタン人たちはコロンビアの都市数カ所にわかれてホテルに滞在することになるのですが、その滞在にかかる費用は全てアメリカ政府が負担することになっています。

このパンデミックの影響で、コロンビアの観光産業は大きなダメージを受けました。今はコロナウイルス第3波も落ち着いて人の動きも徐々に元に戻りつつありますが、長期休暇のシーズンではないこの時期にアフガニスタン難民の受け入れはコロンビアの経済にとって絶好のチャンスと言えるでしょう。

経済的にはプラスになるとされるこの難民受け入れですが、一方で国民からは心配の声も上がっています。

 

治安悪化

隣国ベネズエラでは経済悪化によって数年前から500万人を超えるベネズエラ人が祖国をあとにしています。コロンビアにも大勢のベネズエラ人が流れてきており、若いカップルが赤ちゃんを抱きながら信号待ちの車に小銭をせがんでいる姿を日常的に目にします。食堂やガソリンスタンドで働くベネズエラ人もよく見かけるようになりました。

今コロンビアで問題になっているのはベネズエラ人による犯罪です。全てを捨ててなんとかコロンビアにたどり着いたベネズエラ人。失うものは何もない食べ物に飢えたベネズエラ人に恐怖を感じるコロンビア人が多くいるのが現実です。実際、今年首都ボゴタで逮捕された1万7千人の逮捕者のうちベネズエラ国籍の人は2470人とそこまで多くはないのですが、ニュースで流れる「ベネズエラ国籍の逮捕者」という言葉のインパクトは強くコロンビア人の頭に残ってしまい、コロンビアで犯罪を起こしているのはベネズエラ人だ!という極端なイメージに繋がってしまっているのかもしれません。また引ったくりや窃盗と言ったような軽犯罪にはコロンビアの警察は動かないことも多いため、そういった犯罪を全てカウントすると、もしかしたらベネズエラ人による犯罪率も少なくないのかもしれません。

 

難民で溢れるビーチ

コロンビアのアンティオキア県、パナマ共和国との国境近くに位置する小さな港町ネコクリには毎日1000人もの難民が押し寄せており、現在ネコクリに滞在している難民の数は11,400人とも言われています。

その難民たちの70%はハイチからの難民で、彼らはアメリカを目指して北上しているのでコロンビアは通過点に過ぎないのですが、アメリカに辿り着くためにはコロンビアの隣国パナマに入国する必要があります。しかしパナマが1日に入国できる人数を500人に制限しているためネコクリで足止めを食らった難民が街に溢れかえり、それによって様々な問題が生じているというのです。

ネコクリは小さな自治体で観光地というわけでもありません。当然宿泊施設の数は十分ではなく、寝る場所を確保することができなかった難民や資金を持ち合わせていない2000人もの難民たちが浜辺で寝泊りをしているのが現状のようです。またネコクリにはしっかりとした病院が一つしかなく、医者は10人しかいないにも関わらず毎日50人から70人ものハイチ人がコロナウイルスの症状を訴え病院に押し寄せており、9月9日に市長から緊急事態宣言が発令されるほどになりました。他にも多くの難民が滞在することによってゴミの量が3倍に増え処理が追いつかなくなり、水道や下水のサービスも崩壊寸前だと市長は訴えています。

  

準備はできている

難民による犯罪や医療崩壊、コロンビア人による外国人差別など難民に関する課題が山積みのコロンビアですが、9月6日にイヴァン・ドゥケ大統領は「現在アメリカと調整作業を行なっている。我々は既に準備ができており、アメリカから詳細を待っている段階だ。」と発表しました。

まだ具体的な入国の日程等は決定していないようですが、この更なる難民受け入れを機に浮き彫りになった現在抱えている難民問題に対して、コロンビア政府はどう取り組んでいくかを見直していく必要がありそうです。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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